俺を逃がせ!!

春秋 頼

第1話 特別精鋭部隊スワット

ズンッ!! 押し開いたドアから煙幕を投入して、


ガスマスクをつけた部隊が後に続いた。


「ゴーゴーゴー!!」


「北側クリア!」「南側クリア!」「北東クリア!」


ガスマスクを外した金髪の女性が問いかけた。

「何秒?」

「35秒です」


「ダメね。30秒以内に確保しないと逃げられるわ」

皆、黙り込んだ。

「情報屋の隠し扉の事は確かな情報なんですか?」

大柄な男が話しかけた。

「今までも使ってきた情報屋だし、今回の相手は今までとは違うわ」


「確かに大物です。逃げ道を確保してると考える方が妥当ですね。

疑ってすみません」


「分かればいいわ。捕まえた後も問題よ。一応ヘリの要請もしてるけど、

地上でのルートで、スワットに護送させるか思案中よ」


「30秒切れない場合は?」


「私に雷が落ちてくることだけは確かね」


隊員たちは苦笑いした。

「30秒切れたら今夜はステーキを奢るわ」

仲間は声を上げて喜んだ。

「じゃあ、最初から行くわ。各自用意して! 準備が出来たら

条件を書いたくじを選ぶから、その後10秒から開始よ。いいわね?」


隊長の言葉で、各自用意をし始めた。


「アルファチームOK。ベータチームOK。バレッドチームOK。ゼロ1チームOK」

ゼロ1チームの女性隊長がくじを引いた。

「条件B。10秒後作戦開始」


隊長が手を丸めて指を一本ずつ広げて行った。


屋上からベータチームが煙幕を投下して、ロープを投げおろしてそのまま降下して、

上から敵に見立てた人形の頭を撃ちぬいていった。


アルファチームとバレッドチームは、ベータチームに内側から中に招き入れ、


建物の外の屋上からスナイパーが支援して敵を排除した。


そしてバレッドチームのドアから、ボスに見立てた人形を出した。

「タイムは?」

「29秒!」


皆、手を当てて喜んだ。


隊長はトラックの席につくと、ふーッと一息ついて決行日の事を考えた。

誰も死なないようにと祈った。


これまでの相手とは違う。殺しのプロもいるし、赤外線センサーにカメラ、

それに各所に設置されたセントリーガン。パニックルームに武器弾薬も

戦争かと思うくらいある。


死角はどこにもない。一年前、あのディーラーは他の場所を拠点にしていた。

彼女は刑事で、彼氏のウィルはスワットにいた。


必ず戻ると交わしたキスが、彼との記憶の最後だった。

原形をとどめてない状態で、血液検査で彼だと分かった。


結婚するはずだった。式場も幸せに満ちた青空の下で、

私の幸せの全てを乗せて招待状に書いて送った。


ひと月ほど、私は無断欠勤していた。

そして新たにスワットが組まれる事を、ウィルの友人が伝えにきた。

それだけを伝えて彼は帰った。


私は次の日、スワットに志願しに行った。

どんな苦難な事も、歩けなくなっても這って這って目的地まで行った。

あの時の気持ちを忘れた日は無い。


私は隊長に任命された。でも心の中では復讐しかない私が隊長になるのは

間違いではないかと思った。辞退しようとしたら上司に言われた。


「奴らには誰も勝てないと言われている。奴らに勝つには職務だからでは足りない。

殺すと決めた者しか奴らには勝てない。お前は奴らを殺す覚悟がある。

そしてチャンスがきた。チャンスは誰もが手にできるものではない。選ばれた者が得るものだ。奴らに殺されたウィルの無念を晴らせ!」


ウィルを想い、サラは立ち上がる事を心に誓った。


そして、三日後に控えた戦いだけを胸に秘めて、

スナイパーチームとスワット精鋭部隊の隊長としてサラは本当の意味で立ち上がる。

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