第7話 逃走経路

相手が同じタイプなら、手の打ちようはある。

サラは相手の考えを読み、作戦を立て直そうとしていた。


しかし、要塞と呼ばれるだけあって、士気は明らかに下がっていた。

彼女はまず、勝ち目を見出す作戦を仲間に伝えた。


士気の下がっていた仲間たちの目つきが変わり、仇を討つ目になっていた。


——————————

屋上の数カ所が爆破されたが、予想通り見かけとは違って、重すぎると

いざと言う時、すんなりと出られない為、やや薄目の鉄板で囲まれていた。


爆破班の爆薬で充分に数カ所に穴を空けた。


そして前方からは囮用のキャタピラードローンを再び進ませた。

ドローンは徐々に両脇にある踊り場へ通じる階段を登りながら、徐々に迫っていた。


天井の角に設置されたセントリーガンの弾薬は尽きていた為、どうする気か様子を見ていた。

屋上に空いた穴からロープが投げ込まれ、スワットの隊員は最初は手榴弾しゅりゅうだんを中央の建物に投げつけた。厚めの硬質ガラスが飛び散ったが、その中のガラスには一切傷もつかなかった。二重構造のガラスで、大口径の銃弾でも傷が僅かにつく程度の代物だった。


続けてスワットの隊員が穴から敵の指令室に狙いをつけて、徹甲弾を撃ち込んだ。

弾丸はガラスに弾かれたが、いずれの弾丸も傷を残していた。


ガレッドは電話を手に取り、汚職警部であるバージルに電話をかけた。

「ガレッドだ。今すぐこのゴキブリどもを戻らせろ。おい! 聞いてんのか!」

「聞いている」

「…お前は誰だ?」

「FBIのアベルとレイン捜査官だ。事が大きすぎる為、我々の管轄になった」

「バージルはもう終わりだな」

「他人事のように言うな。お前たち全員終わりだ」

「馬鹿言え。お前ら、誰を敵に回してんのか分かってねぇようだな」

「今、投降するなら待遇の良い刑務所にいれてやるぞ?」

「お前ら全員、必ず殺す! その時を待ってな」


ガレッドは電話を切り、すぐにベリーズに電話をかけた。

「ベリーズだ」

「俺だ。状況がマズい。逃走ルートは確保できたか?」

「一応な」

「えらく弱気だな。いつものベリーズはどこいった?」

「お前も分かっているだろう。今回は今までと違うぞ」

「逃走手順を早く言え。ここもそう長くは持たない」


死角から徹甲弾が撃ち込まれ続けて、亀裂が入りかけていた。

本来は、踊り場に出てくるセントリーガンに対して、囮ドローンに仕掛けた爆弾で、

潰すつもりだったが、それどころでは無いように見えた。


「今からそこに警官隊を送らせる。バージルのような奴とは違い信用できる奴だ」

「それからどうする?」

「警官隊の服を隣のバイクを置いてある倉庫に持って行く。そいつと一緒に外へ出て

パトカーで指定の場所まで送る。あとは逃げるだけだ。簡単だろ?」

「バイクはどうする?」

「今の状況だとパトカーの方が安全だ。そこにそのまま捨てて来い」

「FBIの管轄内だ。追って来るがどうする?」

「大丈夫だ。私が直接FBIから頂いたヘリだ。急だったせいか、一機しか用意されていなかったのは、幸運だった。手下にバッジを取らせて、死体は処分させた。ヘリにはFBIのバッジを入れておく。何かと使えるだろうからな」

「分かった。手下をなるべく多く用意しといてくれ」

「ああ。十分な戦力を揃えて待っている」


「ボス。ベリーズが逃げる手配をしました。今回はあの女に助けられました」

「お前もベリーズも大事な部下だ。これを機に、少しは女ともまともに話せ」

「はい。それでは行きましょう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る