第8話

 次の日からマキは公園のベンチに来なくなった。


 一週間経ってもマキに会うことはなくなってしまった。


 もうマキと私を繋ぐものはこの黒いボールペンしかなくなった。


 一ヶ月後には試し書きの用紙が新しくなってしまった。


 「また会いたい」


 私が書いたその文字は届かぬものとなってしまった。


 中三になって通い始めた塾で、マキと同じ中学校の子がいたから、マキのことを知っているか聞いたけれど、マキは親の転勤で転校してしまったらしい。どこに引っ越したかは知らないと言われた。


 マキの居場所に関する手がかりは、何一つなくなったのだ。

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