第9話 最終話

 マキが来なくなったということは、帰り道に遠回りをしなくなったということ。つまり、寂しくなくなったということ。

 


 私は高校生になった。

 今日は入学式だ。

 

 「今から配る資料に名前を書くように!」


 先生が言うのと同時に生徒たちはガチャガチャと筆箱の中からペンを取り出し始めた。


 ……筆箱、忘れてしまった。


 私がどうしようかと困っていると、隣の席の女の子が声をかけてきた。


 「これ、使う?」


 それはあの黒のボールペンだった。


 もしかして、と顔を上げると、そこにいたのはマキだった。


 「久しぶり」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

文房具コーナーから始まる文通 雨虹みかん @iris_orange

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ