本作のもたらす余韻は、読者により深く入り込ませる魅力がある。

個人的な憶測だが、もしかすると彼女はこの世ならざるものかもしれない。
舞台となった季節とイベント、そしていつも周りには誰かがいる「彼女」。
クラスでの人間関係とは全く異なった、二人だけの世界。

彼女らの邂逅は、単なる青春の一言では言い合わせないような気がしてならない。

おそらく「彼女」は独りになりたかったのだろう。だからこそ独りで過ごす「私」へ憧れ、そして接近したのだ。
さて、「私」は本当に「彼女」の名前が出なかったのだろうか。

爽やかな文体を通して、多くの追想が読者と作品を包み込む。

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