第2話 詳細設定いたしまーす!

「どーだー!」


 ラブコメ製造BOXの説明通り、「どーだー!」と言いながら仁王立ちで現れた女性は、僕の設定通りの色白黒髪で知的美人なお姉さんだった。が、予想と違うことがひとつだけ。



 まさかの!? 全裸!?!?



「ちょまっ! 積極的な性格を設定しましたけどっ! あの、その、な、なんで! 裸なんですかっ!?」


「え……? きゃあ! あわあわあわ、あのですね、これはその、こっちのお洋服にしようと思いつつ、でもこっちも捨てがたいって思っていて、それであのシャワーを浴びた方がいいかと思ってお風呂から出たところで急に呼び出しがかかった的な音が流れて! いけないポーズを決めなきゃと洋服を持ったまま条件反射でポーズを決めてみたらばもう外に出ていた的な!? あ……、み、見ないでぇ!」


「み、見てません! というか、み、見れません! あの、す、すぐに着替えてもらえますかっ!?」


「は、はい! も、もちろんです!」


「ぼ、僕、あの、その、む……、向こう向いてますんで……」


 ビビったぁ! 積極的だからって、最初から全裸?! そして、まさかの女性の裸を生で見てしまう日が来るだなんて……。そ、それにしても、理想通りの細い腰に豊満なバスト……。流れるような黒髪に、色白で知的な美人、まさに僕の理想のお姉さん!……の全裸……。くっ! もしかしてもったいないことをしたのか!? もっと声をかけずに眺めさせて貰えばよかったのか!? いいや、だめだ。そんなことをしてはいけない。それに、僕は女性と話すのも実は苦手なんだからっ!


「あ……」


 ヤッベ、気づいてしまった……。恋愛疑似体験をリアルな肉体を持った女性とできるって、それって結構僕にとってハードル高いんじゃ? だって、女性と付き合うなんて絶対無理ゲーだし、そもそも、学生時代も女子と話したことなんてほとんど皆無……。詰んだ……。はやくも、アウトよりの完全アウト、こんな綺麗なお姉さんとコミュニケーションがとれる気がしない……。くっ! こんなことなら理想を詰め込まず現実的な女性にすれば良かったのかっ!?


「あの……?」


 や、待てよ。だからと言って、これは本物の人間ではないはず。そうだ、未来からやってきたラブコメ製造BOXから出てきたリアルだけど本物の人間じゃない。それであれば、ゲームの中の女性だと割り切って、もしかして大丈夫なんじゃないか……?


「あのぉ……?」


「はっ!」


「もう、いいですよ……?」


「あ、はい……」


 って、うっそーん、振り向いたらむっちゃ綺麗なお姉さんが僕の家にぃ……。少し恥ずかしそうに頬を染めて正座をしているっ! それに結局さっき手に持っていた洋服のゆるふわなスカートの方を選んだのも正解! 薄い水色のスカートに白いレースのシャツの袖からは綺麗な肩が出てるっ!


「あの、先ほどは大変失礼いたしました。まさかの……あんな姿で登場してしまって。しかも、大きな声でどーだー! なんて、恥ずかしすぎますよね……」


「や、あの、大丈夫です……」


 むしろ最高の登場方法だったかも知れません、うむ。とは言えないけど、まぶたの裏に焼き付いております。


「でもせっかく設定してもらったので、気を取り直して、バッテリーが切れるまでわたくし、幸一郎様の理想の女性で恋愛擬似体験のお相手をいたしますので、ご安心くださいませ」


「あ、バッテリーってなんですか?」


「あ、これです。この画面上に出ている数字、これがゼロになるとバッテリーが切れて、私も消えてしまいますので、無駄に使わないようお願いいたしますっ!えっと、それでは早速確認です。幸一郎様の理想の女性は、知的な色白美人で、黒髪ストレート、ふむふむ、それは設定通りでオッケー。あとは、胸が大きめ、ですね、はい、これも多分申し分ないくらいの大きさかと。このどれくらい大きいのがお好みか、のところのチェックボックスにあるように、歩くと揺れる、も、これならいけるかと思います。えっと、それで、性格が積極的にアプローチをしくれる女性ということですね。あ……、こちら、積極的の度合いについてのチェックボックスに印がございませんね。幸一郎さま、積極的って、どれくらいの積極性をお求めですか?」


「は……?」


「ですから、積極的な女性というのは、どれくらいの積極性をお求めでしょうか? こちらのチェックボックスを読み上げますと、肉体的なスキンシップの積極性、会話の上での積極性などの他に、家庭的、小悪魔的、弄られるのが好き、感度が良好、などなど、様々な積極的の項目がありますが? もしよろしければ全部選択という手もありますよ?」


「あの、すいません! ちょっと、いいですか?」


「はい、なんなりと!」


「積極性についてですが……。えっと、僕、実は女性とあんまりお話ししたことがなくて、その……、よく理解ができてないところもあって、それで細かな設定は無しにしたんですよね……」


 は、恥ずかしいけれど、ここは正直に言わなくては。だって、これはラブコメ製造BOXから出てきただけの女性で、人間ではないわけだし。


「そうでしたか。なるほど。では! 積極的な女性の詳細箇所は、全て選択で参りましょう。ポチッとな」



——きゅうううんっ!



「はああう……んっ!」


「だ、大丈夫ですか? そんな身をよじらせて!? 急に、ぐ、具合でも悪くなってきたとか——」


「——はぁ、気持ちよかったぁ……。積極的な女性、インストール完了です」


「え? インストール?!」


「はい、インストール完了。さ、こうちゃん、バッテリーが切れるまで、私と恋愛擬似体験いたしましょうね」


「えっと、あの? こうちゃんって、えっと、ぼ、僕のこと!?」


「もちろん! 幸一郎だから、こうちゃんっ! ね、こうちゃん、バッテリーが切れるまで、私といっぱい、いろんな経験しちゃおうね」


「あ、あの……? なんか最初と雰囲気が……?」


「ふふふ、積極的な女性なので♡」


「あ……はい……。って、あの、近づいてくるのは、まだちょっと……」


「だぁめ! 恥ずかしがってたら、すぐにバッテリーがなくなっちゃう!」


「あの? あの、あのあのあのー……!?!?」




 マジか……。まさかこんな綺麗で僕の理想が詰め込まれたお姉さんに迫られる日が来るだなんて!え? でも、恋愛擬似体験って、一体何をするんだ?!






battery 15046

to be continued……


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