第8話 アニメ『会社の先輩が妙にえろっぽくサッカーゲームの実況を僕の隣でしてくるのですが?!』の最終回は神回でした。

 ラブコメ製造BOXから出てきた僕の理想のお姉さんが、僕の愛読書『会社の先輩が妙にえろっぽくサッカーゲームの実況を僕の隣でしてくるのですが?!』のアニメ版最終回を視聴している……。


『ふふふっ。本気で言ってるの? タカヤ君? 先輩、今日こそ僕は先輩にゴールを決めて見せます、なんて、本当にタカヤ君にできるのかなぁ? どれだけ挑戦してもダメだったのに、できるわけないと思うよ? だって、この半年間、一度だって達成できていないのだから』


 僕の愛読書の主人公タカヤがどんなに頑張っても絶対ゴールできない相手、それが会社の先輩、麗子さん。ラブコメ小説原作のこのアニメは深夜枠のそれもかなりマニアなファン層に向けて放送されている。


『その顔を見ると今日こそは私の中に入れたいってことよね? それも思いっきりシュートを決めてしまいたいのよね? ふふふ。タカヤ君! これだけははっきり言ってあげる。私の中に入れたいならば、もっともっと興奮して盛り上がってこないと、入れられないよぉ? ほうら、またそんな顔して僕だってできますっていうし、すぐにでもしたいですっていうけどね。最初からガツガツするとぉ? うん、そうだよ? いつものように途中でバテちゃうからっ! 最初はウォーミングアップのつもりで私に向かってきなさいよ?』


 甘々ボイスの声優さんの声がたまらなさすぎる……。その挑発的な態度とは裏腹に、少しでも自分が弱いところを見せちゃうと急に甘えっ子ちゃんになる麗子先輩……。そう、まさに最終回のここのシーンなんて特にっ!


『ほらぁ? まだそこは、はやいって言ったのにぃ。ああぁん、やだぁ。それ以上攻めてきちゃだめって……や……やだっ。もっと優しくしてくれなきゃ入っちゃう〜タカヤ君のいじわるぅ〜』


 くっ! たまんないっ!

 そう、まさにラブコメ製造BOXで僕が設定した理想は麗子先輩!

 黒髪ストレートの知的美人でお胸が大きめ!

 さらには積極的な性格!

 なんなら麗子先輩役の声優さんに声が似てるってとこもたまらないっ!


 そ、そうかっ!

 似てるんだ……。

 ラブコメ製造BOXから出てきた時から積極的に責められても嫌じゃないのは、このお姉さんの声が麗子先輩にそっくりだからじゃないか!?


『今のは反則ですよタカヤ君。そんな入れ方じゃぁゴールなんてさせてあげないからっ! ほら、もっと横から攻めて来てくれなきゃ面白くない……あっ! そこ……そこ、うんいい……いい動きしてるぅ。蛇行して走る感じがビンビン感じるよ〜。うわあ、いまのすっごくうまかったぁ。なんで、なんでなんで今日はそんなに上手なのぉ? もう、もうこんなんじゃ、はいっちゃうっ! はいっちゃうからぁ〜! あぁあ〜タカヤ君、すごっ……ぉおい……」


 はうっ! そこの声がたまりませんよっ! 麗子先輩! その攻められてちょっと恥ずかしそうにいじらしくしてる姿も、握りしめて力の入る指の描写も! そして額の汗も、何もかもがたまりませんっ!


「こうちゃん? こういうのが好きなんだね?」


 はっ! いかんいかん、つい神回にのめり込んで麗子先輩を見てしまっていた!


「こういう風にして欲しいってことでいいのかなぁ?」


「あ、や……。でも、あの、さすがにこれはですね……」


『タカヤ君、今日こそ私の中に入れてやるってその意気込み……本気だったんだよね……』


「へぇ、こういう感じ?」


「や、あのですね……これはそのですね……このアニメの最終回どおりにするためにはやっぱり準備ってものが要りますし?」


『あぁぁっ! もう……もう、わたし……ダメかもしれない……入れるなら早く入れてくれないともう、もうもたないかもしれないのぉー……!』


 くそっ! 麗子先輩のそんな声を聞いたら我慢ができなくなってしまうじゃないかっ!


「こうちゃん? こんな風にして欲しいの? そしてゴールを決めたい……ってことでいいのかな?」


「や、えっと。あの……すぐは無理ですよね? その、準備するものがありますしね……?」


『すごい〜! すごすぎるぅ〜! 今日のタカヤ君は本当に今までとは見違えるほどにすごいからぁ!』


「ふむふむ、こんな風にしたいわけだね? こうちゃん?」


「あ、あの……」


『あっ……本当に入っちゃたぁ〜! 初めてゴール……されちゃったぁ。もう、すごい指使いだったの。今日は本当にすごくはやく動いてたの……。タカヤ君、最高だったのぉ』


 はっ! ついにタカヤが麗子先輩にゴールしたシーンが……。


『私の負けだね……もう、なかに入っちゃったし……』


 ううう。長かったな、タカヤ。

 何回見ても涙が出てくるよ。

 お前は俺、そのものだよ。

 

 女子と話したことなんてほとんどない工業高校出身で、ほぼほぼ男子校のサッカー部。会社に入っても女子が怖くて付き合えない。そんなタカヤに妙にかまってくる美人な先輩、麗子さん!


 僕にはそんな人なんてリアルでいないけど、でも、今少しだけお前とおんなじような状況を楽しめるような気がするよ!

 

 準備さえすれば、今からこの部屋でついに僕も……。

 タカヤ、お前みたいに美人なお姉さんのゴールにシュートが決められるかもしれないんだぜ?

 

 タカヤ、お前ならこの状況どう思う?

 その画面の向こうから僕に声をかけてみてくれよ!


 俺みたいにゴール決めてもいいんだぜ? って、きっとお前ならいうよな?


『タカヤ君、もっかい……しよ?』


 ああ、麗子先輩も画面の向こうで呼んでいる……。


「こうちゃーん? どうする? 一緒にこのアニメの最終回を再現してもいいんだお?」


 あああああ。

 神様、僕は真面目に生きて来ました。

 ずっと真面目に生きて来ました。


 今日くらい、ご褒美もらってもいいでしょうか?


「こうちゃーん? これをここに用意すればいいのかなぁ?」


 ああ、僕の理想通りのお姉さんが、僕を誘っている〜。

 麗子先輩にそっくりなお姿と声で呼んでいる〜。

 

 もう戻れない!

 いけ! 行くんだ友坂幸一郎!


 そして、『会社の先輩が妙にえろっぽくサッカーゲームの実況を僕の隣でしてくるのですが?!』の主人公タカヤのように、女性とまともに渡り歩ける男になるんだっ!


 僕は心を決めた。

 だからラブコメ製造BOXから出て来た僕の理想のお姉さんにこう声をかけた。


「はい。そんな感じの準備でオッケーです」と。


「じゃあ、これで準備はよしっと! ね? こうーちゃーん♡ バッテリーも少ないし? すぐにでもアタシとしよ?」


「はいっ! 喜んでっ!」

 

 僕も愛読書の主人公タカヤのように、アニメ版の麗子さんにそっくりなこの綺麗なお姉さんにゴールを決めてやるっ!




 僕はテレビの前のお姉さんの隣に座った。


 


battery 1519

to be continued……

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