第9話 サヨナラは突然のバッテリー切れで!

 隣にいる僕の理想通りのお姉さんは、僕の愛読書のアニメ版のヒロイン役そのまんまのビジュアルで、そんな僕の理想を詰め込んだお姉さんが、こともあろうか、僕に最終回の再現をしてあげるっていってくれた。つまりは、麗子先輩にゴールを決めるシーンを再現してもいいってことだ。


 なんてことだ!

 そんなの幸せすぎるじゃないかつ!


 一部のマニアックなファン層に絶大的な人気を誇るラブコメ、『会社の先輩が妙にえろっぽくサッカーゲームの実況を僕の隣でしてくるのですが?!』の何が素晴らしいって!


 それは!


 実際にはエロいシーンなんて一ミリたりとも出てこないのに!

 小説だと麗子先輩のゲーム実況の活字のチョイスに!

 アニメ版だと声優さんの声に撃沈してしまうのだっ!


 僕はそこにハマり過ぎてかれこれ五年前からずっとこのアニメを視聴している。限定ボックスも購入すれば、麗子先輩の声優さんのささやきボイスCDだって持っている。


 聞いてるだけで、別次元にプシュー……と昇華しまうこともある。

 それだけすごい声優さんと台詞の数々。

 

 そんな僕のお宝アニメから出てきたヒロイン、麗子さんみたいな黒髪ストレートの知的美人なお姉さんが、これまたアニメの設定どおり僕の部屋着を着て一緒にこれからサッカーゲームをするだなんて!


 ああ、むちゃくちゃたまらないっ!


「ねぇ? こうちゃん? これで準備は全部揃ったでいいんだよね?」


「はい! 完璧です!」


 完璧かと聞かれれば、ノーブラノーパンのお姉さんというところが完璧以上なのか、はたまた完璧以下なのかは分からないけど、そこはもう今となってはどうだっていい!


 だって! 愛読書の中の麗子さんがノーブラノーパンかどうかなんて確か書いてなかったはずだしっ!


 うん。そこ冷静にそう考えるとそうなんだよな。

 エッチなシーンなんて一ミリも出てこないんだから。

 毎回タカヤの部屋着のジャージ着てるしな!


「で? これって結局は、二人でサッカーゲームを楽しむっていうだけのアニメなの?」


「もちろん! このラブコメ、小説原作がまじですごいんですよね。麗子先輩がいつも勝手に恋愛経験のないさえない主人公の部屋にやってきて、勝手に主人公のジャージを着て部屋でゴロゴロしながら一緒にサッカーゲームをやるだけの話なんですけど、そのゲーム実況が妙にえろっぽくてなまめかしくて、小説で読んでると、サッカーゲームの実況中継をしてるだけなのか、それとも別のことをしているのかが分からなくなってくるんです!」


「へぇ〜」


「でもですね! 全くエッチなことなんてしてないし、そんな描写もないんですけど、なんかえろっぽいんですっ! そこが恋愛経験のない僕にはちょうど心地がいいというか。だってですよ? 女性の、は……裸とか……。刺激が強すぎてですね……。 だからこその、脳内で妄想できるこの作品は僕の最愛の作品と言っても過言ではないかとっ!」


「へぇ! すごい作品愛を感じる! あ……。ごめん! こうちゃん! もうバッテリーが?」


「へ? え? あれ? お姉さん? お姉さん!?」


 僕の目の前で、「バッテリーが?」と言った瞬間、お姉さんの身体がどんどん薄くなり消えてしまった?!


「うそ? 消えちゃった?! えええ?! これからだったのにぃ?」




『タカヤ君にゴールして欲しくてずっとこの日を待ってたの。好きです! 私と付き合ってくれませんか……?』



 ラブコメ製造BOXから出て来たお姉さんが消えた僕の部屋には、推しのアニメの感動の最終回ラストシーンがハッピーな感じで流れていた……。



 くっ! アニメとはいえリア充! 羨ましいっ!

 


 でも積極的なお姉さんと過ごした今の僕ならば誰かと恋愛できるような気がした。多分、少しは恋愛経験できてるはず?


 そうなると僕は誰かと恋愛がしたいかも。

 だって、恋愛って自分以外の人を大事に思うことなんだと、なんとなく思ったから。それって幸せなことなのかもって、僕は今思ってる。



「で! その相手はどこで探せばいいんだってこと!」



 まだまだ僕の恋愛初心者時代は続くのかもしれない。



battery.....0

the end

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【G’s こえけん】恋愛経験皆無のチェリーな僕に届いたラブコメ製造BOXを開けたら理想の女性が現れて積極的に僕を攻めてくる話はかなりのラッキー!?ではなく最恐怖!? 和響 @kazuchiai

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