第4話 設定変更って、できますか?

 一人暮らしのアパートで日曜日の午前中から自分のパンツを手洗いする僕。そして、そんな僕をノーブラノーパンの知的美人なお姉さんがバックハグしている……。


 これって一体どんな状況なの!?


「ふふふ。洗っちゃうなんて、もったいないな」


「なんのことですかっ!?」


 ラブコメ製造BOXの説明書をあとでもう一度読んでみよう。そうだ。そうしよう。そして、設定が変更できるかを調べてから変更できるものならば変更したい!


 そうだ、設定変更をすればいいんだ。僕ナイスアイデア! まだバッテリーはあるみたいだし、そんなに減ったりするスピードも早くない。でも……。


 変更したら今僕の背中に当たっているこのふんわりふわふわな物体も消えてしまうのだろうか……。くっ! そこは諦めろ! いいや、諦めずにそれの大きさは今の設定のままでいいんだ! え? じゃあ、どこの変更したら?! そうか、この積極的な部分をなんとかすれば僕、意外といけるんじゃ?


 そうだとしたら、見た目はそのまんまで、性格の積極性だけなんとかすればいい。そうすれば僕の背中に当たっているこのふんわりふわふわと、時々感じる小さな二つの塊は死守できる。


「こうちゃんは、なにを考えているのかなぁ?」


「はっ! いいえ、別に何にも考えていません……」


「ふうん? あのね、もしも設定の変更をしたいだなんて思ってたら、もうできないよ?」


「え!? うそ?!」


「ほぉんと! だって、もう一回設定変更しちゃったでしょ?」


「え? 僕設定変更しましたっけ?」


「うん。積極的の設定のところ、私が最初に確認したときに全部選択にしちゃったよ?」


「え?! でも、それはお姉さんが勝手に?」


「勝手じゃなーい。私、最初に聞いたもん。どうする? って。それでよくわからないからってこうちゃんが言ったから、じゃ、全部ありにしときますねって。ふふふ。その顔を見ると、思い出したってことかな?」


「ややや、あのですね、そのですね、僕はその時は積極性の意味をわかってなかったというだけでして、その、今となってみれば、ちょーっと積極的すぎるかなって思ってですね……」


「変更は召喚されてから一度だけなんだ。ふふふ。まだまだバッテリーも残ってるし、一緒に恋愛擬似体験、楽しもうね! こうちゃん♡」


「うっそ……」


 まじか。このイケイケ積極的モードのお姉さんからの設定変更はもうできない!? というか、てことは、バッテリーが切れるまで、このお姉さんが僕の目の前から消えることはないってこと?!


「バッテリーが切れるまで、お姉さんは消えないんですか?」


「ふふふ。そうなの!」


「バッテリーはどうやったら減るんですか?」


「私といろんなことをしたら減ってくんだよ?」


「いろんなことをしなかったら?」


「バッテリーが長持ちして、私は消えてしまわない。あっ! それはそれで楽しいかも! るんっ!」


 うっそお……。じゃ、何かしなくちゃお姉さんは僕の前から消えてしまわないってこと!? いや、待てよ、だって明日は会社に行かなきゃだし……。会社に行ってる間はお姉さんはどうなるわけ?! この家にいるってこと!? ノーブラ、ノーパンで?!


「こうちゃん? もう、お水が出しっぱなしですよ? もったいないですよ?」


「あ、ああ、すいませんっ!」


「さ、パンツのお洗濯はもうおしまい! お部屋に戻って恋愛擬似体験の続き、しよ?」


——ぎゅっ


 ヒョエー! ぎゅっとかされたら、ふんわりふわふわが、もきゅって僕の背中にぃー……。ああ、感じる二つの存在……。その色具合まで思い出せてしまう自分の脳みそが憎いー……


——むくっ


 ダメダメ、ムクっとしたらダメだからっ! あ……、うそだろ……お姉さん、そこは触ってはいけない場所……ひょー……



「可愛いこうちゃん♡」



 耳元で囁かないでぇー……ああ、また意識が遠のいていく……だ、ダメだぞ、どっかに飛んで行くなよ友坂幸一郎! お前は今までまともに真面目に生きてきた成人男性だろ? 少し指が触れたそんなことくらいで意識がなくなってしまっては男がすたるだろ!? とにかくなんでもいいから話すんだ!


「あの!」


「ん?」


「あの!」


「なぁに?」


「あのあの!」


「はぁい?」


「えっと……」


「うんうん」


 くっ! 女性と何を話していいかわからないっ! でもとりあえず、このお姉さんが洗面所で僕をバックハグしている体制から動き出さなきゃ始まんねー! や、特に何も始める気はないけども! けどもだ! 


「パ、パンツ……洗い終わったし、その、一緒にあっちでテレビでも見ませんか?」


 よく言えました僕! テレビを見るなら特に会話をする必要はないはずだ!


「うん。もちろんいいよ。こうちゃん♡ じゃ、一緒にいこっ♡」


「や、あの一緒にっていうほど広い部屋でもなくて……」


「恋愛擬似体験その1! 恋人とテレビを見ながらさりげない会話を楽しむ! それって、いいなって私は思うなっ!」


 あああ、だめだ。僕の背中から離れて僕の手を引き一歩進んだお姉さんが僕の方に振り向いた反動で美しい黒髪がふわりとなびいてる姿が美しい……。そして、真っ白なブラウスのふんわりふわふわエリアから、浮き出て見えるその蕾。


 ち、ちくっ、ち、ち、ちー……見えてますなんて言えない……。


 ああ、ほんのり透けて見えてる二つの蕾に妙にえろっぽさを感じて喜んでいるもう一人の自分がいるー……


 チーン……


 くっ! だ、だめだ。もう、これ以上、パンツを手洗いするわけにはいかないっ! しっかりしろよ! 友坂幸一郎!ええい!えろっぽいこの状況を脱してやるっ!


「あの! すいません! とりま! あの! その服着替えません!?」




 僕の欲望と理想を詰め込みすぎたお姉さんはどんな状況下でも刺激的すぎて、存在自体が積極的です。





battery 11277

to be continued……

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