歴史の闇に灯る光――普遍のやさしさを描いて
- ★★★ Excellent!!!
まるで月明かりに包まれた古い山里を旅しているかのような、不思議な余韻を残す物語でした。
歴史の闇夜を必死に生きるおゆきたち姉妹の姿には、切なさと静かな強さが漂っています。理不尽な運命に翻弄されながらも、小さな祈りとささやかな温もりが繰り返し描かれていて、読後も心の奥に静かな灯りがともるよう。妖や観音の加護といった幻想的な存在が、決して浮つかず、戦国の世の土の匂いとともに自然に溶け込むのが魅力的。
登場人物のさりげない優しさや言葉の端々に、時代や身分を越えた“人の心”の普遍性を感じました。最後まで流れる清らかな水のような語り口が心地よく、哀しみの中にもどこか希望が滲みます。
静かに命をつなぐ物語が、読む人それぞれの“祈り”を呼び覚ます一作だと感じました。