月と逃げる
ミコト楚良
一ノ弦 山城
とんと、かたかた、とんか、たた。
みょうちきりんな音頭を取りながら、手を振り腰を振り、われが踊ると、
ほんに美しい人じゃ。
筆頭家老の
姉さまは、すこぅし足が悪かったが、そんなことは城所の若さまはすっ飛ばして室にと望まれた。
われは
だから、この
ひゃー、
われ、まだ、嫁にも行っておりませぬで、乳も出ませぬが。
おっ
そんなことをしているから、お
「おゆき、はしたないことを言うでない」
すぐ、
物心つく頃には、
お
そして、
二番めの若君は、
われは、若君二人の乳母となり申した。
そうだ、これは話しておかなければ。
我らの城の当主さまは、
お父上は討死になさり、幼いながら当主となられた。後見役には叔父上がついていなさる。
筆頭家老の
この正月には、
われは、ひれ伏したままであったから、よくは御拝顔できておらぬが、
だが、かわいらしさにおいては、やはり
とんと、かたかた、とんと、かた。
そうして、
この
それと、
われらは、けっこうな大国にはさまれた小さな士豪よ。
山間の城は、捕ったり捕られたり。
かつて、
後見人の叔父上さまと次席家老さまは、
「頼みがある」
「留守の間、この城の奥はお前たちが守るのじゃ。なんぞの時は落ちのびろ」
「なんぞの時とは」
「われらが負けるはずないが、用心じゃ」
そう、
武家の家に生まれたからには、
子を
それから、幾日後のことだったか。
城の中が浮足立っていた。
何やら、男衆の動きがおかしい。
われは、そろりと家老屋敷から出て、城門周辺まで降りて行った。兵士が右往左往している様子が見て取れた。
「――の」
「――の鉄砲隊に」
「――総崩れに」
この慌てふためきようは、負け戦の臭いしかしない。
そのうち、甲冑姿の後見役の当主叔父上さまと次席家老さまがいらした。
「――城門を閉ざせ。
「
果たして、
もともと、叔父上さまと次席家老さまは、
いったんは従ったが、
そもそも、
叔父上さまの見込み違いは、筆頭家老の
「ここで裏切るか」
だが、叔父上さまと次席家老さまにすれば、
そのわずか数騎の中に、
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