二ノ弦 脱出
この城にいる者は、もう誰一人として信じるわけにいかぬ。
「この屋敷には、抜け道があるのです」
家老屋敷の裏手に雨水を貯める井戸があった。この城の欠点は、掘っても水が出ないことであった。
その井戸は打ち捨てられていた。
「古井戸は
井戸の中へ下りると、手前側の側面に、ぽっかりと水門が開いていた。
まず、われが降りて、
月の光を背で受けて、お顔の様子はわからない。
「
「
われは
「われは残ります」
「……
「
「かあさま」
小さな
「大丈夫ですよ。二人とも、おゆきの言うことをちゃんと聞くのですよ」
それから、一人一人に呼びかけた。
「
「
「おゆき、頼みましたよ」
「
見上げるおゆきに、「あぁ、必ずな」と、姉さまは笑ったようだった。
急がねばならない。
ねっとりと汗ばむ闇の中を、おゆきは
抜け穴の先は、
もう
幸い、
心細く、真っ暗な辺りを見渡していると、人の近付いてくる気配がする。
「しぃぃ」
われは、
「おゆきさま」
小さく呼ぶ声がした。
「
見知った者であった。六之助さまの守り役の一人だ。
切り立った河岸は自力では登れない。
おゆきは、まず与一を高々と差し上げて、
次は
「さてと」
おゆきも懸命に岩にしがみついた。
「お、重うございましたか」
やっとこさ、おゆきは立ち上がった。
「いえ、
褒められたのじゃろうか。
「御案内いたします」
※〈蛍石〉 夜になると光る
虫よけと滅菌効果もある
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