第7話

 あの旅行から三ヶ月後、私は結婚した。その翌年の春にとこちゃんのお姉ちゃんが、秋にとこちゃんが結婚した。


 私達は結婚式の前に約束をした。かわいい便せん二枚に同じ言葉を書いて自分たちの署名をした。


今まで通り、「きっこちゃん」、「とこちゃん」とお互いの名前で呼ぶこと。  

間違っても姓で呼ばないこと。


お互いに、「私」を主語にして話すこと。間違っても夫や子供の話をしないこと。


お互いに、結婚生活の愚痴をこぼしたり、友人、知人のうわさ話をしないこと。


お互いに、比べ合わないこと。


 私達は別れ道にさしかかったのだ。今までのように一緒にはいられない。おぼろげながら、二人の人生が大きく違ったものになるであろうことをわかっていた。


「きっこちゃん、私ら、窮屈な約束してしもたな。」


「ええやん。二人で、黙ってお月さん見て、お酒飲むの、わるないで。」


「きっこちゃん、お酒飲むの、ほどほどにしいや。」


「とこちゃんもやで。見てみいな。きれいな、満月や。」


「きっこちゃん、うちら、長生きしよな。」


「せや。いつかきっと、思い通りになる。生きてたらな。そのうち、きっと。」



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別れ道 簪ぴあの @kanzashipiano

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