第6話

「とこちゃんは、お姉ちゃんと何かと比べられて大変やったな。」

「お姉ちゃんは、親のええとこばっかり似てるさかい。ぱっちりした大きい目はお父ちゃん。でも体つきはお母ちゃんに似て、細うて、すらっとして、肌の色は白うて、ほんま、べっぴんさんやからな。うちは逆や。お母ちゃんに似て目が細うて、最近、仕事がきつうてやせたけど、お父ちゃんに似て太りやすいたちやから、子供の時に、おかめてからかわれた。」

「そやったな。とこちゃんいじめた悪ガキ、小学校の終わりの会でとっちめてやった。」

「よう言うわ、きっこちゃん。終わりの会まで待てへんかったやんか。その場で悪ガキに説教して泣かせたやん。それでも足らんて、終わりの会の時にみんなの前で言うたんやから。」

「ハハハ……そ、そんなこともあったな。まあ、青くさい正義感だけがうちの取り柄やし‥‥‥」

「きっこちゃん、今さらやけど、ありがとうな。」

「うちこそ。とこちゃんがいてくれたおかげで、ぐれんと人生やってこれたわ。美人のお姉ちゃんと比べられるのも辛いけど、跡取りの弟がおって、お前は、はよう嫁に行けて言われ続けるのも、ええ加減、しんどかった。なんや、自分の生まれた家やのに居場所があらへんみたいでな。」

「さっき、お姉ちゃんのために、離れを改築してるて言うたけど、お父ちゃんとお母ちゃん、お墓も新しくしたん。うち、うっかり、新しい大きなお墓になったんやし、うちもいれて欲しいていうたら、嫁に行ったら嫁ぎ先の墓に入るんやって、おこらえた。うちだけ、家族のみんなと一緒のお墓に入られへんのやなあ。ちょっとさみしかった。」

私は何も言わずに、とこちゃんの肩を抱いた。

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