魔術という日常の裏側を知った主人公と、奇妙な夢が導く未来が気になる…!
- ★★ Very Good!!
ある日の放課後。日も暮れた運動場から聞こえてくる音に興味を惹かれた主人公がその場に行ってみると、剣を握った男2人による殺し合いが繰り広げられていた。そこに“ヤバさ”を感じた彼は逃げ出そうとするも、そのうちの1人に見つかり、2度も窮地に陥ることに。生き残るために思考を巡らせる彼が唱えたある言葉。
そして、それに応じて召喚されたのは美しい銀髪の少女。彼女の手には伝説の武器の名を冠する槍が握られていた。
この出来事を機に、主人公は人の命を弄ぶ組織と、それに対抗する組織の争いに巻き込まれていく──。
一人称で語られる物語。主人公の心情描写、セリフ、地の文のバランスがよく読みやすい。それが顕著に表れるのは戦闘シーンで、余計な文のない最低限の描写で描かれているためスピード感と迫力を感じることができました。魔術を使う際の詠唱も格好良く、物語に馴染んでいて、どこか残酷で血なまぐさい全体の雰囲気をもり立てる要素になっています。
そんな世界で描かれる主人公の日々。何気ない日々から突如として日常の裏側に引き込まれてしまう彼の動揺や努力が、先に上げた心情描写とともに描かれており、そこには確かな人間性が見られます。特に混乱についてはその通りで、奇異な出来事に巻き込まれたただの少年の反応には説得力があり、序盤から世界観に引き込まれました。
そこからは主人公と共に一気に“あちら側”へと引きずり込まれるわけですが、1話1話が簡潔にまとめられいるため、とてもテンポ良く感じます。一人称ならではのツッコミがアクセントになっていて、彼があくまでも巻き込まれただけだけの少年であることを印象付けられます。
しかしながら、もちろん彼も主人公。度々描かれる、彼が見ている不思議な夢。魔術を使う者たちが興味を持つほどの“何か”を持っていることが折につけて示唆されていて、主人公自身への期待は高まる一方です。彼自身の秘密が明かされたとき、その時こそ、覚醒の時なのでしょう。
物語はまだ序盤(19話時点)。今のところ魔術もろくに使えない主人公は咄嗟の機転で窮地を乗り切ったり、謎の男に助けられたりと、ただの一般人である印象が強いです。
しかし、間違いなく彼には“強さの秘密”があって、強くなろうと努力もしている。銀髪のヒロインと日常と向こう側を行き来しながら送る危うい日々の中。魔術の存在を知った彼が覚醒する時は果たして来るのか…。
主人公の努力、そして今後に期待が膨らむ、そんな素敵な作品です!