非常に完成度の高い小説だと感じました。それに面白いですね。秘密結社と魔術というと、一昔前の王道だったので少し懐かしい感じもしました。
それに魔術でわざわざ剣を作って戦うというのも、某Fateのアーチャーみたいでいいですね。もしかしたら、モデルはあのアーチャーなのでしょうか。
少年の性格も非常に主人公向きです。向こう見ずで誰かを助けるために命を投げだす。どんな、危機に陥っても彼はそこから誰かを助けるでしょう。
だからこそ、一読者として不安もあります。彼の目的は何なのか??強くなりたい、そんな憧れだけでは説明できないほどの行動を主人公は取っているように見えるからです。
私の好みの問題かもしれませんが、何のために強くなりたいのかを知りたいと思いました。そうでなければ、主人公は強さしか得られません。強さの先の幸福を目指してほしいと思います。それが物語の構成上叶わないとしても、です。作者からすれば、彼らの努力は記号でしかありません。書きたいラストを描くための記号。
でも、主人公を筆頭とする彼らにとっては大切な時間だからです。だからこそ、彼らの行動にはきちんとした行動原理を提示してほしいですね
まだまだ、序盤の物語。仮面の魔術師も主人公も槍の少女も謎ばかり。でも、彼らは魅力的なキャラクターばかりだと感じました。誰もかれもが物語という流れの中で藻掻いています。その様は現実と言う荒波の中を彷徨う私たちを見ているようです。
そんな中で彼らがどんな輝きを見せてくれるのか。叶わないかもしれない望みや目標、真剣に目指すそれらは散る姿すらも美しい。完成度の高いストーリーだからこそ、その流れに負けないくらいの輝きをキャラクターが魅せてくれることを願います。
どうか、ご一読ください!!!
ある日の放課後。日も暮れた運動場から聞こえてくる音に興味を惹かれた主人公がその場に行ってみると、剣を握った男2人による殺し合いが繰り広げられていた。そこに“ヤバさ”を感じた彼は逃げ出そうとするも、そのうちの1人に見つかり、2度も窮地に陥ることに。生き残るために思考を巡らせる彼が唱えたある言葉。
そして、それに応じて召喚されたのは美しい銀髪の少女。彼女の手には伝説の武器の名を冠する槍が握られていた。
この出来事を機に、主人公は人の命を弄ぶ組織と、それに対抗する組織の争いに巻き込まれていく──。
一人称で語られる物語。主人公の心情描写、セリフ、地の文のバランスがよく読みやすい。それが顕著に表れるのは戦闘シーンで、余計な文のない最低限の描写で描かれているためスピード感と迫力を感じることができました。魔術を使う際の詠唱も格好良く、物語に馴染んでいて、どこか残酷で血なまぐさい全体の雰囲気をもり立てる要素になっています。
そんな世界で描かれる主人公の日々。何気ない日々から突如として日常の裏側に引き込まれてしまう彼の動揺や努力が、先に上げた心情描写とともに描かれており、そこには確かな人間性が見られます。特に混乱についてはその通りで、奇異な出来事に巻き込まれたただの少年の反応には説得力があり、序盤から世界観に引き込まれました。
そこからは主人公と共に一気に“あちら側”へと引きずり込まれるわけですが、1話1話が簡潔にまとめられいるため、とてもテンポ良く感じます。一人称ならではのツッコミがアクセントになっていて、彼があくまでも巻き込まれただけだけの少年であることを印象付けられます。
しかしながら、もちろん彼も主人公。度々描かれる、彼が見ている不思議な夢。魔術を使う者たちが興味を持つほどの“何か”を持っていることが折につけて示唆されていて、主人公自身への期待は高まる一方です。彼自身の秘密が明かされたとき、その時こそ、覚醒の時なのでしょう。
物語はまだ序盤(19話時点)。今のところ魔術もろくに使えない主人公は咄嗟の機転で窮地を乗り切ったり、謎の男に助けられたりと、ただの一般人である印象が強いです。
しかし、間違いなく彼には“強さの秘密”があって、強くなろうと努力もしている。銀髪のヒロインと日常と向こう側を行き来しながら送る危うい日々の中。魔術の存在を知った彼が覚醒する時は果たして来るのか…。
主人公の努力、そして今後に期待が膨らむ、そんな素敵な作品です!