現代に現れた怪物を相手に、星の力を得た高校生が“物語”という星座を紡ぐ

(※本レビューは第一節をメインに紹介したレビューになります!)

 春。出会いの季節。高校入学を機に始まる新しい日々に胸を膨らませる女子高生が、第一節の主人公。

 入学式を終え、自教室へと向かった主人公はそこで、数年前に行方不明になった男子高校生と運命の再会を果たす。

 しかし、身にまとう雰囲気も、言葉遣いも、主人公が知るものとは全く異なっていた。

 ときを同じくして、主人公が暮らす街に泥人形を始めとする謎の生物が姿を見せ、人を襲うようになる。凶手が主人公に向けられたとき、さっそうと姿を見せたのは鎧を身に纏った謎の戦士で……。

 数年ぶり。運命の男女の再会がもたらすのは希望か、それとも──。



 数話ごとに視点を変えて描かれる、一人称の物語。地の文もしっかりしていて、読みやすかった印象です。

 特に女子高生目線──ユイの時は、活発で少し熱血気味に思えるユイの人となりが言動から見て取れる一方で、視点としての描写は丁寧でどこか俯瞰的。淡々としており、何が、どこで、いつ起きたのか。とても分かりやすく、脳内にイメージしやすかったです。

 他方、男子校生目線──マサトの時は、真逆。淡々として無機質な言動とは裏腹に、内に秘めた激情と優しさが漏れ出たような、とても情熱的な描写であるように思いました。

 この対比構造が本作の二面性となっており、同じ作品でありながら2つの物語を楽しんでいるような。ちょっとしたお得感がありました。

 また、他の方も書いていらっしゃるように、ユイの活発な性格がとても勢いよく物語を進めてくれていた印象です。

 彼女がグイグイと物語を引っ張っていくからこそ物語に退屈さは感じられない。動的な彼女がいるため、真逆の存在──マサトの場面で描かれる“静的”な動き……悩みや葛藤がより引き立つ。ユイの明るさと、マサトの優しさ。それぞれが互いを高め合っていたように感じました。

 そんな本作の魅力は『ロマン』なのではないでしょうか。

 丁寧な描写に支えられた星座モチーフの骨太な設定。また、変身するという戦隊ヒーローや仮面ライダーにも見受けられる格好良さと、興奮。

 人々を脅かす敵を、変身ヒーロー・ヒロインが守る……。これ以上ないロマンに思えます。(本当は男のロマンと言いたいのですが、ジェンダーだと言われるかもなので大声では言わないでおきます……!)

 黄道十二星座をはじめ「星座」というモチーフがあるおかげで、読者としては次にどんな星座が来るのか、その能力は、などなど、妄想を掻き立てられてしまいます。翻ってそれは本作への興味となり、ついつい全部の星座の能力を見てみたい衝動に駆られました。

 個人的には黄道十二星座から漏れたあの星座が特別扱いされてるのがなんとも乙に感じます。十二支の「猫」的な特別ポジションっぽくて「絶対何かあるじゃん!」と期待せずにはいられません。敵のボスなのか、味方サイドなのか……。能力も一癖二癖ありそうですよね。

 また、キャラに目を向けると、変身できるできないキャラの差にも注目したいです。

 マサトくんは作中で「選ばれた」と表現しすが、誰が、どんな意図で、ユイさんやマサトくんを選んだのか。あるいは何かしらの条件があるとして、その条件とは……などなど。

 主人公・ヒロインを必ず好きになる私としては、ユイがマサトに固執していた理由が、本当に幼馴染だから“だけ”なのか。そのあたりも気になるところです。

 そうして、各所に散りばめられた謎。その小さな点を繋いでいけば、いつか。星座のように、大いなる意味を持つんだろうというこのワクワクは、まさに星空のロマン!



 もうすぐ夏真っ盛り。天の川や夏の大三角を見上げる季節です。…が、たまには。現代に現れた怪物を相手に、高校生たちが地上に描く星座の物語を指でなぞってみるのはどうでしょうか?

 星が好きな方、また、変身ヒーロー(仮面ライダーなど)が好きな方に一度はおすすめしたい、ロマンの詰まった作品です!

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