Constellation Knight 〜私達の星春〜
Remi
第1章 1年生
1節 再会
第001話 泥人形と鎧人間
4月最初の月曜日。私、
私は今日から高校生で今から入学式。春といえば色々あるけど、やっぱり今年は出会いの春。これから始まる高校生活に私は胸を高鳴らせていた。
支度を済ませて家族と一緒に家を出る。
今日の空は青く晴れ渡っていた。それはまるで「高校生活はいいことしか起こらない」と言っているかのように。
☆☆☆
すっかり忘れていた。入学式は楽しくないことを。
高校生活は本当に楽しみにしていたけど、入学式はちょっと、いやかなり退屈だった。座っていろんな人の話を聞いてるのを、楽しいか楽しくないかで聞かれたら楽しくは……ないよね。
体育館での入学式が終わるとこれから1年間過ごすことになるクラスに移動するように言われた。
そして今は同じクラスになった人と喋りながら担任の先生が来るのを待ってる。
「というかさ、入学式長くなかった?座ってただけなのにめっちゃ疲れちゃったんだけどさぁ〜」
「確かに長かったけど…入学式ってそういうものじゃない?」
「うちの卒業式よりも長かったわ〜。ところで、やっぱ私立だから体育館綺麗じゃない?うちの中学はさぁ〜」
「はい、みんな席につけ〜。このクラス初めてのホームルームをするぞ〜」
ようやく担任の田村先生が入ってきたので、みんな席に戻っていく。
みんなが席につくといろんな紙が最前席から配られていく。配られた紙の中にはクラス分け表もあった。
先生の話を聞きながら私は自分と同じクラスになった人達の名前を上から見ていく。
見始めてすぐに私は「
陰星 真聡。まーくん。小学生まで同じ学校で家も近く、小さい頃は毎日遊んでいた幼馴染の1人。あのときはきっと中学校も同じだと思っていた。
しかし、実際は中学校の入学式にその姿はなかった。
学年の名簿にはどのクラスにも名前はなかった。
後日、家に行ってみると彼の家は「買い手募集中」という紙が貼られていた。
それ以来、連絡も取れずどこにいるのかわからなかった。
そんな彼の名前がこの表によると私と同じクラスになっている。
私は今すぐこの名前が私の知っている彼なのかどうかを確かめに行きたいのをぐっと我慢する。流石にホームルーム中の今行ったら変な人扱いされるのは間違いない。それは嫌だ。
悩んでいると、どうやら今から一人一人自己紹介をしていくらしい。
それで確かめたらいい。目立つ行動をせずに彼かどうかを確かめることができる。
私にしてはいい考えだと思う。
私の記憶の中の彼は明るく、いつも人の輪の中心にいた。
そんな彼に私はついてまわって、ほとんど一緒に行動していた。
だからきっと、私のことを覚えてくれてるはず。私はそんな期待を胸に自己紹介の彼の番を待っていた。
☆☆☆
結論から言うと、彼は彼ではあったけどまるで別人のようだった。
昔の明るさはまったくないどころか、凄く暗くこう…「誰とも関わりたくない」ってオーラが凄かった。
でも外見の特徴は私の記憶の中の彼とあまり変わりはなかった。
「きっと本人だ。私が話しかけたら思い出してくれるはず」と思って、ホームルーム終了直後に話しかけようとしたが、彼は見つからなかった。
嘘のような話だけど、本当に透明になったかのように彼の姿はどこにも見当たらなかった。
その後、家族から帰ると連絡が来たのでとりあえず今日は帰ることにした。
まー君については…まぁ「同じクラスになったんだし、これから喋る機会はたくさんあるはず」と諦めて今日は帰ることにした。
そして今、私は私の家族ともう1人の小さい頃からの友達で家も近所のひーちゃんこと
彼女もまー君とは昔遊んでたから相談をしてみる。
「ねぇ。ひーちゃんはさ。陰星 真聡って…覚えてる?」
「懐かしい名前だね。覚えてるよ」
「実はさ…多分まーくん。私と同じクラスなの」
私がそう言うと彼女は「え?」っと声を出して足が止まる。
普段はあんまり感情が表に出ないタイプの彼女ですらとても驚いてるのがわかる。
そうだよね、普通は動揺するよね。
「あのときの自分の考えはおかしくなかった」と思いながら私は話を続ける。
「でもなんかさ、性格が全然違うくて…なんか話しかけにくかったんだよね…。それに話しかける前に見失っちゃったし…。だから明日さ、一緒に来て欲しいのだけど…いい?」
「いいよ。行くなら放課後?」
「うん、そのつもり!やった〜!ありがと、ひーちゃん!」
話しているといつも分かれる路地まで来た。
私は「じゃあ、また明日!」と彼女に言い、彼女の両親にもペコっと頭を下げる。そして、家の方向へ向きを変えたとき。言葉にできない嫌な空気を感じた。
何かが沼の中から這い上がってくるような音が住宅地に響く。
あたりを見回すと、ちょうど私の家を挟んで反対側にある路地の地面に黒い染みのようなものがあるのが見えた。
すると、そこから黒い泥人形のような何かがたくさん湧き出てくる。
私は怖くなり後ろに下がろうとして、尻餅をつく。
そこに私の家族とひーちゃん一家が私を心配して走ってきてくれた。
私は手を借りて立ち上がり、みんなで泥人形から離れようと後ろに下がる。
泥人形はこちらに気づいたのか近付いてくる。動きは早くないけど確実にこちらに向かってきている。
そして、その後ろではさらに泥人形が地面から湧き出していた。
私達はとりあえず逃げようと少しずつ、後ずさりをする。
しかし、泥人形も同じ速度で近付いてくる。
走って逃げるべきか、このまま一定の距離を取り続けるべきか。
そう考え始めていたそのとき、路地の奥から光が飛んできた。
その光は目がついているかのように、私達に近い泥人形に当たる。
その光が当たったいくつかの泥人形は崩れて消えていった。
光が飛んできた方向を見ると、そこには人型で全身に黒い鎧のようなものを着たものが路地から現れた。
こっちに来ていた泥人形は一斉にその鎧人間の方に向きを変え、襲いかかる。
鎧人間は慣れているかのように、襲ってくる泥人形を殴って蹴って消していく。
そうして、私達があっけにとられている間に鎧人間は泥人形をすべて消してしまった。
鎧人間はあたりを見回した後、こちらを見る。
私はなぜか鎧人間の目は見えていないのに、目があった気がした。
私はお礼を言おうとするが、それよりも早く鎧人間は歩き出す。
そして現れた路地裏へ入っていく。
私は走ってその後ろを追いかける。
危険なのはわかってる。
だけど、なぜか走り出していた。
しかし、私がその路地に辿り着いたときには鎧人間の姿はなかった。
このときの私は、この日が全ての始まりだということに気づいていなかった。
この先私が、何に巻き込まれて、私達に待ち受ける結末を知る由もなかった。
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