主人公の少女リアは、自身に全くの落ち度がないにもかかわらず、立場を貶められ、辛く厳しい生活を余儀なくされてしまいます。
ですが、持ち前の意志の強さによって、たまに俯くことはあっても確実に一歩ずつ前進していきます。読者はその姿にまず、心打たれることでしょう。
序盤、これでもかと苦難が襲いかかるリアですが。手を差し伸べてくれる青年、フランやドルフに出会い、助けられ、あるいは彼らを助け、手を取り合い、自身を取り巻く大いなる因縁との戦いに立ち向かっていく――
主役級のキャラクターであるリア、フラン、ドルフの三人だけに留まらず、脇を固めるその他の人物たちもしっかりと描写され、決して物語のための使い捨ての舞台装置にはなっていません。
会話文だけでなく、適切な描写を切り取った地の文で、彼らの活躍だけでなくその苦悩までをありありと感じ取れる……そんな良質の読書体験があります。
時折挟まる短編も素晴らしいアクセントとして――緊迫感溢れる本編とは趣を変えた甘いデザートのようで、キャラクターへの思い入れを一段と深めてくれます。
……と、まあ、長々書いたんですが。言いたいことはひとつ!
手にとってどうぞ読んでみてください! 品質は私が保障します!
キャラクターだけの小説でなければ、物語だけの小説でもない!
両方おいしく頂ける、そういう小説です!
さあ、一緒にリアたちを応援しましょう!
作者様の文章力が非常に高く、読みにくかったり、作り込まれた設定と世界観に破綻があるなんてことは全くありません。
文句のつけようがないんです本当に!
ですので、ここからは自分の推せる部分を書かせていただきますね。
ヒロインが、とにかく前向きで、天国から地獄に突き落とされても、どんなに酷い目でに遭っても、理不尽に裏切られても、彼女は倒れません。
打ちひしがれても、最後には奮起して、前に進むんです。
こんなに応援したくなるヒロイン、そうそう出会えないと思います。
読者であってもそう思うのだから、傍にいる仲間だって、そんな彼女に応えたくなるのも自然なこと。
タイプはまったく異なるのですが、まるで王子様のような二人が、ヒロインを支え、共に苦難の道をいきます。
この三人の掛け合いが軽妙で、尊いと表現がいちばんしっくりくるぐらい最高なんです!
逆ハーレムとかではなく、みんながみんな尊重して尊敬し合ってるので、女性1人、男性2人の関係性でも全然イヤミじゃなく、頬笑ましく読むことができます!
緻密な世界観を誇るファンタジーが好きな方や、ひたむきに頑張るヒロインと、それを支えるダブルヒーロー……そんなシチュエーションが好きな方、絶対に夢中になれるので、ぜひ御一読を!
光のラフィリアに祝福され平和な世界に生きていると思っていたリアが、突然自分が「奇跡の力」を持たないことで地底送りの身となり、絶望の淵に突き落とされる物語です。
リアが無垢で一生懸命なキャラクターとして描かれているので、彼女の身の上にすぐに感情移入できました。両親や親友から愛情深く育てられ、信心も篤かったのに、力がないというだけで一転、蔑まれる存在となる無情さに胸が痛みます。
一方で、地底に送られる寸前に現れた優しい黒髪の青年は印象的でした。「キミはきっとまた、ここまで上がってこれる」という言葉は、リアだけでなく私の心にも希望の灯火を灯してくれるようです。
リアが地底でどんな運命をたどるのか、そしてラフィリアを信仰する地上の社会が本当に正しいのかは今後の展開次第ですが、主人公の成長と世界観の深化に期待が高まる興味深い出だしでした。
誰もが光の女神・ラフィリアが授けた奇跡の力を持って生まれるはずの世界で、国主の娘として生まれながら、その力を持たなかった主人公、リア。
力を持たない者は「モグラ」と呼ばれ、地底に落とされてしまう。リアも地底で暮らすことを余儀なくされるが、その先に待つものは――
どのような形で生まれるかは、誰にも選べない。しかし、生き方を選ぶことはできる。そのことを強く感じさせてくれる物語だと思います。
奇跡の力を持ち、地上で暮らす人々が無謬かというとそんなことはなく、力の強い者と弱い者の間にある格差など、歪みが描かれていきます。
そんな中で、リアは何を思い、どう生きていくのか。
そして、女神ラフィリアの秘密とは。
彼女たちがどのような運命を辿るのか、目が離せません。
※4話目までお読みした時点でのレビューです。
私達はファンタジーの世界に住んでいるというわけではありませんが、現実世界にもまた、才能のある人とない人のヒエラルキーが存在しているように思います。
本作は女神から力を与えられた人々が地上に住み、そうでない人は地下でひっそりと暮らすという世界観になっています。
地上に生まれながら何の力も持っていない少女・リアは、地上の人々の蔑視を受けながら地下世界へと送られましたが、力を与えられなかった人々が、苦しみながら地下生活を送っているかというと、決してそういうわけではないようです。
むしろ、プロローグにおける地上の人々の方が、目に見えないものに圧制されて、息苦しく生きているように感じます。
プロローグ章から地底章へと移った途端、人々の開放された生命力を感じるように思いました。
第4話の『楽しい事、悲しい事。それは平等にやって来るのだとすぐに知った。』という一文が印象に残りました。
現代社会もまた、『与えられる人』は生きづらく、『生み出せる人』は生き生きと生きていける。そんなものなのかもしれません。
ストーリーを読み進めていけばもっと深くこの作品を理解し、いいレビューも書けると思うのですが、冒頭4話で感じた登場人物の生命力に、色々と感じるものがあり、レビューをお書きしました。
素敵な作品に出会えて嬉しかったです。