同級生の相談事(最終章)
川崎は、取引先の会社の女子社員に惚れられたのをいいことに、その若い女の子を藤木マンションに囲って三年ほど弄んでいた。
地下鉄から見えるマンションの部屋は、会社の帰りに寄るのに都合がよいのと、部屋に灯りが点いているのを電車から見やって、何でも言いなりになるペットでも飼っているような気分の川崎は、ひそかにほくそ笑んでいた。
だが、その若い愛人に執拗に結婚を迫られた川崎は、不動産会社のスタッフの吉村に大金を渡して、この若い愛人を殺させ、死体を目と鼻の先の河川敷に遺棄させた。
地下鉄の終電の時間を指定して、吉村に殺人をじぶんに見せつけるようにして殺させた。
不動産会社のスタッフの吉村は、殺人現場を見たとネットに書かれて往生し、川崎を強請って手にした大金で海外へ高飛びしようとして、逆に殺されてしまった。
「目をかけていた愛人に結婚を迫られたからといって、殺すものでしょうか?」
可不可の論理的な頭脳では、理解のできないことだった。
「何でも思い通りになると思い込んでいた愛人が歯向かって来たので、逆上したのか。それともひとが殺されるのを見て楽しむ嗜虐趣味でもあったのか」
「シギャクシュミ?それ分かりません」
可不可が首をひねった。
やがて、地下鉄の高架の下を流れる細い川の向こう側の河川敷に埋められた女の子の腐乱した遺体を警察犬が発見した。
その週の日曜の午後、いつもの駅前の喫茶店で玲子と会った。
どうして引きこもりになったのか、玲子にたずねられ、
「ひとが怖いというか、ひとの目が怖いというか・・・」
と答えると、
「みんなじぶんのことで精いっぱいだから、誰も東條くんのことなんか見てやしないよ。何が怖いものですか。・・・ハイスペックの東條くんの中の、理想とする東條くんが、現実のロースペックの東條くんを見るから、じぶんを見る目に耐えられないだけ。生きはじめる前に、自滅してしまっている」
玲子は怒ったように言った。。
「東條くん頭いいんだから、探偵事務所でも開けば・・・。可不可という相棒もいるし。お客は私が見つけて来てあげる」
玲子は、真っすぐな目を向けて言った。
それで、可不可探偵事務所という看板でも出そうかと思った・・・。
(了)
同級生の相談事~引きこもり探偵の冒険2~ 藤英二 @fujieiji_2020
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