同級生の相談事(その12)
管轄の警察署にそのまま出向き、今までのことをすべて話した。
相談係の枯れた柳のように細い事務官は、メモを取りながら熱心に話を聞いてくれたが、
「で、どちらが被害者の身内なの?」
とたずねた。
「いえ、どちらも身内ではありません」
事務官はちょっと驚き、
「警察は失踪者の身内からの届け出でないと捜索はできません」
と言った。
「いえ、ですから失踪者を探してほしい訳ではなく、殺人を告発しているだけです」
「あのね、死体が見つからなければ殺人事件の捜査は行えないのね。これ、分かります」
「可不可、ああ、・・・うちの犬が室内で血の匂いを嗅いで、死体が河川敷にあると言っています。いや、・・・そう教えています
「あなた個人の犬でしょう。警察犬ではないですよね」
事務官は口の端で笑った。
相談係は丁寧な対応をしてくれたが、目撃情報だけでは警察は捜査をしないということがよく分かった。
「河川敷を掘り返して死体を探すしかないね」
セダンを走らせながら玲子に話しかけると、
「相当な広さね」
玲子はうんざりしたように言った。
可不可ならピンポイントで探せるかもしれないが、やってみなければ分からない。
家に帰り、可不可とこの話をすると、
「ヤコブソン器官をターボ化すれば自信はあります。その分、腐ったゴミとかいろんな臭いから嗅ぎ分けなければならないのがつらいですが・・・」
感情がないはずの可不可にしては、珍しく弱音を吐いた。
『こんなことをして何の得になる』
すっかりネガティブ志向の引きこもりなので、どうにも前向きに行動を起こす気になれない。
ぐだぐだ考えているうちに、日は暮れた。
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