その手は、今度こそ

西暦一九五一年。元号は昭和。
200年前、身売り先の村で殺害されたおちよは、満開の桜の下で神職の金朗と出会う。
死者と生者、時間を超えて出会った二人。

「殺されたのよ。殺されて、焼かれて、灰を撒かれた。この桜の木にね」
「まるで『花咲爺』だ」

金朗は、おちよの死の真相と、おちよが成仏できる方法を探し始める。

戦争が終わったばかりの時代。
「これからを良くしよう」と生きる金朗と、そんな金朗と自分の心残りを見つめるおちよ。

自分の生と死を、無念と憎しみに寄り添う人を見つけたおちよは、金朗のためにあることを提案したのだが……。

200年の間に、様々なことが変わった社会。
しかし人の醜さも、生への意地汚さも、そして寂しさも愛しさも、恋も。時を隔てても変わらない。
真正面からそれらを見つめ、けれど陰鬱さはなくからりとして、最後は良かったと思える。そんな物語です。

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