概要
耳と口の機能が入れ替わってしまった少年と、家庭内暴力を受けている少女の淡い恋の物語。
第五回こむら川小説大賞
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!非現実が現実になる、文字で
ネタバレなく読みたかったという気持ちからザックリとしたことばかりを書きますが、作者の大きな魅力のひとつである映像喚起力が今作はマジで凄い。いつも凄いけど今回は特にハイビジョン。もう映像どころか気温とか湿度、音とか匂いまで感じられるような、さながら言語のVRである。そんな鮮烈な筆致と、主人公目線の飾らない言葉に誘われて、随所に顔を出すファンタジックさ・不思議さがあたかも当然・普通の現実みたいに思えてくる。その頃には完全に没入しているというわけです。しかもなおかつこれは青春であり、大変にエモーショナルなんです。ごめんなさい言葉の人間ではないもので、軽薄なことしか書けませんけれども、どうか、もっと…続きを読む
- ★★★ Excellent!!!小さな世界の片隅にふたりきり
大きな手術の後遺症のせいで、クラスから浮いてしまった小学生男子のお話。
王道のボーイミーツガール、少年の日の淡く小さな恋の物語です。
なんですけど、でも作中のところどころに現実とはかけ離れた、なにか幻想的な現象や出来事があるところが個性的。
タグの「マジック・リアリズム」「スペキュレイティブ・フィクション」に偽りなし、独特の物語世界のありようが、不思議な読み心地となって深く印象に残ります。
物理的・現象的にはファンタジックな出来事が発生していながら、しかし描かれている物語そのものは決してファンタジーではないところがとても好き。
わたしたちの生きる日常と地続きの、いやそれそのも…続きを読む - ★★★ Excellent!!!良い感じにぶっ飛んでる
良い感じにぶっ飛んでるし、良い感じに狂ってる。特に年齢設定が絶妙。ユーモラスでグロテスクな非現実設定と子供の持つ残虐性と柔軟性のイメージを上手く組み合わせることで、単なる衒奇的な話にとどまらず、しっかり小説として面白い作品に仕上がっている。子供って平気で虫やら生き物潰すんですよね、そういう残虐性って、大人になって共感力があがっていくにつれて段々と失われる。そういう無邪気なグロさみたいなものが表面的にも潜在的にもあって、自分達もそれを経験してきたから気持ち悪いって感じにはならず、子供の頃こう考えてたなー、こういう想像したなーってのも所々出てきて、何だかノスタルジーすら感じた。エモい前フリとオチ…続きを読む