ネタバレなく読みたかったという気持ちからザックリとしたことばかりを書きますが、作者の大きな魅力のひとつである映像喚起力が今作はマジで凄い。いつも凄いけど今回は特にハイビジョン。もう映像どころか気温とか湿度、音とか匂いまで感じられるような、さながら言語のVRである。そんな鮮烈な筆致と、主人公目線の飾らない言葉に誘われて、随所に顔を出すファンタジックさ・不思議さがあたかも当然・普通の現実みたいに思えてくる。その頃には完全に没入しているというわけです。しかもなおかつこれは青春であり、大変にエモーショナルなんです。ごめんなさい言葉の人間ではないもので、軽薄なことしか書けませんけれども、どうか、もっと多くの人々に知られますように。いつか音楽をつけたいです。
大きな手術の後遺症のせいで、クラスから浮いてしまった小学生男子のお話。
王道のボーイミーツガール、少年の日の淡く小さな恋の物語です。
なんですけど、でも作中のところどころに現実とはかけ離れた、なにか幻想的な現象や出来事があるところが個性的。
タグの「マジック・リアリズム」「スペキュレイティブ・フィクション」に偽りなし、独特の物語世界のありようが、不思議な読み心地となって深く印象に残ります。
物理的・現象的にはファンタジックな出来事が発生していながら、しかし描かれている物語そのものは決してファンタジーではないところがとても好き。
わたしたちの生きる日常と地続きの、いやそれそのものとまったく同一の、小さな恋の物語。
クラスの中、いじめというほどでなくとも、はみ出しものになってしまうことの寂しさや苦しさ。
同じ立場のふたりが惹かれあい、心を通わせること。
ほの切なくて、甘酸っぱくて、なんだか悶えたくなるような何かがいっぱい詰まっていました。こういうの大好き。
あからさまに不思議でありながら、でもある種日常的でもある、とても素敵な物語です。
少年と少女の物語が好きな方は是非。
良い感じにぶっ飛んでるし、良い感じに狂ってる。特に年齢設定が絶妙。ユーモラスでグロテスクな非現実設定と子供の持つ残虐性と柔軟性のイメージを上手く組み合わせることで、単なる衒奇的な話にとどまらず、しっかり小説として面白い作品に仕上がっている。子供って平気で虫やら生き物潰すんですよね、そういう残虐性って、大人になって共感力があがっていくにつれて段々と失われる。そういう無邪気なグロさみたいなものが表面的にも潜在的にもあって、自分達もそれを経験してきたから気持ち悪いって感じにはならず、子供の頃こう考えてたなー、こういう想像したなーってのも所々出てきて、何だかノスタルジーすら感じた。エモい前フリとオチも効いていて、あぁああ!!良い!!ってなりました(語彙)個人的には優勝です。