第5話 御厨家再臨

浜松決戦を前に、加藤家と小林家が一斉に陣を浜松市街前に引いた。

茂「いよいよですな」

正雄「ええ、ここで決着を付ければ、静岡を我々で半分ずつに領土分け、他の都道府県に一気に差を開けられますぞ」

加藤家の急報係「茂様、急報です」

茂「誰からだ?」

急報係「機密院長官からです」

茂「いったい何事だというんだ」

正雄「差し支えなければ、私にも共有をしていただきたく」


暫くの沈黙の後、茂は、口を開いた。

茂「正雄さん、これまでの労力が全て水の泡と帰しました。」

正雄「何を馬鹿なことを。いったいなんだというんだ?」

茂「御厨家の主要一族暗殺の情報はフェイクで、実は全員健在だということです。」

正雄「!!!」

茂「すぐさま撤退しましょう。今引き返せば、最悪の事態は避けられるかもしれません」

正雄「しかし、ここまでの侵略行為を御厨家、そして渡辺家が許すと思うか?」

茂「正雄さん、冷静になりましょう。ここでやけを起こして攻め入れば、目の前の戦いにこそ勝てても、きっと御厨家の総攻撃を前に我々は粉砕されます。」

正雄「そう、だな。茂さんの言うことはとても正しい。今引き下がれば、我々指揮官クラスの断罪だけで許してもらえるかもしれない。」


こうして、静岡県はギリギリのところで滅ぼされることなく存続することとなった。今回の御厨家滅亡のフェイクニュースは、しっかりとした真実が明らかにこそならなかったが、一説によると御厨家貴族院長老たちによる全国の長期安定を見据えての調査の一環であったとのこと。強大な軍事力がこの列島に存在することの意味、意義、必要性を実証を持って証明することを必要と判断してのことだった。その後、加藤財閥と小林財閥、鈴木財閥は解体され、それぞれにナンバー2の一族が繰り上げという形で管理することとなった。

この東京都一極集中体制が、実際は列島の平和と秩序を維持することに寄与することが証明されてからは、もう誰も何も言わなくなった。

結果を見ると、こうした体制は、決して否定され得ないことがわかった。

今回は、列島にだけ話を当てたが、これは、世界秩序にも言えることではないだろうか。そう、誰しもが思った。

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日本列島統一戦 カンツェラー @Chancellor

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