誰だって都合のいいものだけを見て生きている

 幼い頃の事故がきっかけで、霊的なものが見えるようになってしまった男性のお話。

 もうゴリッゴリのホラーです。えーっなにこれすっごい怖い!
 いや、主人公の語り口そのものはなんだかうっそりぼんやりしているんですけど、それがかえっておっかないというか……。
 語られている内容とのギャップも相まって、なんとも独特かつ強烈な印象を与えてくれるお話です。

 冒頭のエピソード、妙に具体的な描写がとても好き。
 中華包丁とか漫画雑誌とか、それ自体はそんな特別でもないはずの小道具が、強烈なインパクトでもって脳裏に刻まれるこの感じ。
 一瞬で物語に引き込まれました。

 あとはもうネタバレが怖いので詳しくは触れられないんですけど、物語の締め方が大好きすぎて……。
 ものすごく綺麗にキュッと纏まる感じ。
 しかもそれでいて、もう一段ガクンと落ちるような怖さみたいなものまであって、思わず膝を打ちたくなるような思いでした。

 大変素敵なホラーです。
 分量も約3,500文字と短く、さっと読めちゃうのでおすすめ!

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