12話 慢心
(とりあえず、波動だけで戦ってみるか。Dランクのあのオークよりは弱いだろうし、多分大丈夫だろ)
「初めての数的不利、、、さて身体強化も様子を見ながら使おう」
そう言いながらスモールボアの群れ(6匹)に突っ込む。
6匹との距離は約20メートルほど、1度戦ったことのある経験からするとこの距離でも安心など全く出来ない。
「グルラッァァァァァァ」
などと考えているうちにボアの一匹が飛び出してきた。
(やっぱ結構早えな…バイクぐらいか?)
ボア系統の危険度を上げているのは鼻の付近に生えている牙とこの速度。
警戒はしすぎるくらいが丁度いい。
波動の効果で得た恩寵は直線的な突進を避けることは造作もないこと、突進後の後隙を刈ろうと動いたところいつの間にか近づいていた2匹のスモールボアが姿勢を低くした状態を視界の端で捉えた。
「ここで追撃入れたら躱せないか、、、」
渋々諦めて回避に専念。攻撃はいつでもできるけど怪我したらそれも出来なくなる、ギリギリで体を捻って回避を試みた。
余裕が無かったせいか大きく距離を取ってしまった。
「あっぶな!?慣れないことはするもんじゃないよな、ミスって牙が足に刺さるところだったわ」
今日も今日とて自分に文句を言いたくなる零だが…
(反省会はあとあと…やっぱり複数を相手取るのは動きにくいな、攻撃を当てるのも一苦労だぞ、、、)
4匹目が姿勢を低くした、1匹目の様に突っ込んでくるつもりだろう。
(集中しろ!さっき見たろ!ここで躱しながら攻撃を叩き込む!)
零の想定とは裏腹に姿勢を低くするだけで中々突進してこないスモールボア、違和感を感じた瞬間、咄嗟に振り返った。
(やられた!)
そう思ったのも束の間、衝撃で吹っ飛ぶ。
利き足をザックリやられてしまったために立ち上がるのもやっとだ。幸い振り返っただけあって無意識に魔力でその部位を守ったので大事には至らなかったが、まさか猪如きが意識を逸らす役、そのうちに攻撃を仕掛けるなどといった連携をするなど露にも考えていなかった。
初めて多数を相手取るにも関わらず、舐めて縛りながら戦ったツケを払わされることになった。
(本当にやばい!何度も喰らっていたら冗談抜きに死ねるな!)
焦って心臓がキュッと縮こまる感覚を感じながら、気合を入れなおす零。
(忘れてたよ、、、これは命の取り合いだもんな。何が波動だけで戦うだよ…だけどまだ取り返しはつく、むしろ今このタイミングで慢心していたことを知れたのは僥倖だったな)
心のうちで脳が起こしたパニックを落ちつけるために、原因を探り、正当化していく。
(敵のいないとこに吹っ飛ばされてラッキーだったな、お陰で時間が出来た)
「使うか…身体強化」
緑色の覇気を纏いながら零は考える。
今追撃に来た3匹のスモールボアはもはや脅威ではない。
短剣に波動を纏わせたその一閃は容易にスモールボアの首と胴体を分けた。
ガッ!っと断末魔をあげる。残ったスモールボアは敵討ちと言わんばかりにこちらへ突っ込んできたが…1匹1匹丁寧に首に短剣を合わせ、切り飛ばしていく。
5回、5回しか要らなかった
首刎ね作業を繰り返し一歩も動かず戦闘を終わらせた。
一時はあんなに焦っていたのに、身体強化魔法を使ってからは呆気なかった。
深手を負ってしまった零はこれ以上血を失うのも危険だし、戻ってどっかしらで治療受けられないか、思案しながら耳(討伐証明部位)を回収していく。
失念していたのはこの場で血を流し、先程まで戦闘音が流れていたという自分の置かれた状況。
「ゴグルゥゥゥゥゥ」
「…まじか」
後ろを振り向くと此方を獲物を見る目で見て来るモンスターがいた。
先刻戦った魔物とは多少似ているが明らかな別種、纏っている覇気で分かる。
さっきの奴とは“格”が違うと…記憶の片隅にあった掲示板の情報を思い出す。
「此処で来るかよ…ファングボア…ランクは確か
Cランク」
異世界を1日1回のガチャで生き抜く Sky @souka0818
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界を1日1回のガチャで生き抜くの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます