世界が変わる瞬間は、和風だろうが洋風だろうが、ましてや中華風であろうが、どこでも興味をそそるもの。
本作は中華風ファンタジー絵巻とでもいいましょうか、神獣の夢とされる世界が舞台となっています。
その中での変革は、ほんの細微なものに過ぎず、しかし着実に積み重なっていて、思わぬ方向に転がります。
これが非常に面白い。
特に信仰に関しては、森羅万象のあらゆる事象(変怪)が、ひょんなことから偶像化されて崇められていく様は、裏事情を知る読み手にとっては滑稽にも思えたり、得心したりするものです。
その中でも龍はひときわ異彩を放つ存在で、人々は翻弄されていきます。
このお話はオムニバス形式で、中心となる人物が各話に配置されてはいますが、全体で見た主人公は神獣の夢である世界であり、その現身の青年・如朦でしょう。
彼は眺めることしかできませんが、読み手である我々もまた、この物語を追うことしかできません。
ただ彼と違う点は、読み手は世界の変革を楽しめるということでしょうか。
叙事詩が好きなら、本作は一読の価値アリです。
あっという間に読み手を世界に惹きこませる筆力があります。
精緻な筆致で紡がれる、中華風の幻想絵巻です。
『神獣の見る夢』が形作る世界に生きる、その世の主役ではない人たちの在り様をオムニバス的に綴った本作。
さまざまな視点から見た『龍』の存在感が、『この世界』の形を徐々に表していきます。
まるで古典作品のような印象を受けますが、すっと頭に染み入ってくるように読みやすい物語です。
俗世の人々が『龍』に抱く畏れや憧れ、そこから成る信仰、実利的な物欲……どれも現代を生きる我々に通じるものがあり、説得力があります。
作者さまの物語に共通する魅力ですが、複数の人物が論議をするシーンが非常に面白いです。どれもすとんと腑に落ち、すっと胸が空く話の運びがお見事。
数多の登場人物たちの中でもひときわ存在感のあるのが、多嘉螺と如朦の二人。彼らがこの世界でどんな役割を果たしているのか——ぜひあなたの目でご確認ください。私からは、圧巻のラストでしたとだけ申しておきます。凄かった。
非常に読み応えのある作品でした。とても面白かったです!
最初に1話目を開いたとき、『読ませる気があるのか?』と思いました。
Web小説にあるまじき改行の少なさ。極めて高い漢字率とルビ率(私も人のことは言えませんが)。
けれど、最初の一段落目を我慢して読み下し(そう、冒頭から漢文や擬古文を読むレベルの硬さがありました)、二段落目に差し掛かってから、第一話完結までの記憶がありませんでした。
あれ? と思って冒頭に戻り、読み始め、気が付くとまた第一話の終わり。
夢中になる、
――ということを、久しぶりに思い出しました。
語り口は優美にして端麗。世界観は驚くほど重厚。
中島敦の『山月記』や『名人伝』を思わせる、『耽美』としか言いようのない素晴らしいストーリー。
間違いなく読み手を選ぶジャンルではありますが、騙されたと思って読んでみるべきです。
ただ、不満があります!
第一話、第二話冒頭辺りまでは『神話』だった内容が、じょじょに群像劇化していったところまでは良かったのです。第三話ラストのどんでん返しは息を呑みました!
けれど第五話で群像劇ですらなくなって、セリフマシマシ、ありきたりな小説になってしまった!(いや、これはこれで面白いですよ!? 一気に読破するくらいに超面白かった! ですが!!)
これはこれとして、武石氏が紡ぐ神話がもっともっと読みたい!! そう思って氏の小説一覧を訪ねたのですが、神話は無かった! 無かったのです!! つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
と、ワガママを言っても仕方ありません。
総じて高濃度で高品質な、本当に素晴らしい作品でした!! \\\\٩( 'ω' )و ////
物語の語りが素敵でした。
中国の怪奇話の雰囲気がすごく出ています。
妖怪についての解釈がかなり好みで、実際に民話として存在してそう。
セリフや語りの書き方がとても中国の民話、怪奇話風で本当に創作?と思ったくらいです。
世界観に浸れて読めてよかったです。
あと「常夢」という造語(だと思いますが?)もセンスがいいなぁと思いました。
文章がお上手で、きっと作品をいろいろ読まれているのだなぁと感じました。
どういう経緯で書かれたのか、どうやって発想したのか裏話も聞きいてみたい作品でした。
(まだ拝読途中なので読み終えたらレビューも加筆していきたいと思います)
拙いレビューでごめんなさい(汗)