世の中は冷たく、生きづらい。

本作は約1万字の連載作品ですが、コロナ禍の時事性もあり、興味深く拝見しました。

医療に携わっている方々はここ数年、本当にお辛い状況にあると思います。
私自身も第7波でついにコロナに掛かってしまい、病院でお世話になりました。
先生や看護師さんには感謝してもしきれません。

本作はどこか冷め切った、ガラス質の冷たい口調で物語が進行します。
この作品を拝見していると、いかに現代社会というものが個人の尊厳を軽視しているか、思い知らされるような気がしました。
個人的な気持ちですが、思いやりのない人と接したり人のことを奴隷扱いするような人を見かけただけで、げんなりしてしまいます。
権威を持った人だと、他者を手駒にすることも上手いのでしょうか。
下で働く人たちが病んでいく事例は、この世に溢れています。

それでも、生きることに絶望した人間を救うのも、また人間なのでしょう。
ラストの展開には安堵しました。

幸せに生きることは難しいです。
ですが、小さな優しさが積み重なれば幸せへの道が開ける事を、この物語は示してくれています。
主人公が末永く幸せであることを祈らずにはいられません。