三人の婚約者【ヒロイン】と共に開拓する、異世界建国ストーリー

階段を踏み外して死んでしまった『天野川冬馬』は、同じく異世界で死亡した男爵家の三男坊な学生『リオン』と入れ替わるように転生する。その容姿は醜く太っており、女性達からの評判も最悪。しかし異世界で信仰される『婚活神』の天啓により、三人もの美少女が自分の婚約者となっていた。
リオンとの婚約破棄を拒絶したために宮殿を追放された王女ルミアーナ、義妹のシルフィ、剣聖を目指すクスノハと共に、リオンこと冬馬は神から与えられたスキルを活用し、辺境で自分達だけの国を興す――!

『異世界転生』というと、モテない男子や無職の人間が死亡し、異世界においてイケメンやチートスキルを所持した人物に生まれ変わって大活躍するのをイメージするかと思います。しかし今作では自他共に認めるキモデブに転生してしまい、そこの部分でオリジナリティや面白さを感じました。それでも『スキルメイク』という便利かつ強力な能力によって、サクサクと問題解決していき美少女達にモテる展開は、実に王道だと思いました。
スキルを駆使し、魅力的なヒロイン達に囲まれつつ、国を造り、分かりやすい悪役の王様から国を買い取ろう、という明確な目標設定がされているのも良かったです。単に目的もなくダラダラと辺境でスローライフを過ごすのではなく、物語全体の方向性が定まっているために、飽きることなく読み進められました。

ただ、本作固有の強烈なオリジナティである『キモデブ要素』が、序盤で消失してしまったのは非常に残念でした。
たとえ太っていたとしても、ヒロイン達や周囲の人間を惹き付けるほどの内面や活躍や魅力が発揮されるんだろうと期待したのですが、10話を過ぎた辺りで痩せてしまい47話現在までそのままなのは、作品の個性を潰してしまったと感じます。これでは普通の異世界ハーレムというか、『現実ではモテない肥満体だったけど、異世界転生したらイケメンでモテモテになった』みたいな話と、大した差異が生まれないです。
それに美少女達とのラブコメや新ヒロインが登場する展開になっても、「結局この子たちも痩せたイケメンの方が良いんだなぁ」と感じてしまい、勝手に切なくなってしまいました。
あらすじやキャッチコピーやタイトル、作品の根幹であるコンセプトを、作者自らが早々に否定して切り捨ててしまうのは、小説の執筆において一番やってはいけない行為だと個人的には思います。

ですが「異世界でキモデブに転生して詰んだかと思ったら、便利スキルで活躍した上に痩せてモテモテになるとか最高じゃん!」と感じる人には、間違いなくオススメの作品だと思います。ライトな読みやすい文体で展開もテンポ良く進み、好感度の高いヒロイン達に囲まれるハーレム要素も申し分ないです。
彼ら彼女らが国をどんな形で拡張していくのか、荒れる祖国をその先に買収することができるのか、今後の展開に期待です。

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