怖いと思う根源がむき出す
削ぎ研いだ文章が呪そのものになったかのように喰らいついてくる。
呪がねり塊り邪悪そのものとなった現象が、神も仏も手が出せない状態で
「腹痛先生」のもとへ持ち込まれてきます。
腹痛先生=邪祓師の卜部は
元気可愛いバディ・亀(かなめ)をつれて邪悪を払う。
その方法は陰陽の道に深く基づき、人のこころに添い人道的で優しく感じ
怖い恐ろしいの暴風をあびた後だからこそ、ラストで感じる爽快感はクセなります。
女好きに隠れる本性が楽しみな水鏡や
ミステリアスまとう秘書の翡翠たちとのやりとりも、恐怖との攻防に明るく息つくエッセンス。
いま、ケース3。
強力な呪物が直接こ⃞しにきています。
腹痛先生=邪祓師の卜部はいつもどうりにひょうひょうと
「俺の結果が地火明夷。まあ困難でも明けない夜はないってことだ」
おたのしみになれますよ。
私の求める本格ホラーの要素が全部盛りでした!
1つ目、怪異はしっかり怖いこと。怪異に関してはグロくても読みます。だって意味のあるグロだから。
2つ目、グロ以外のしんしんと迫りくる怖さもある。実際には何も起きていなくても、鏡に変なものが映ったり、プールのはしに影が落ちていたり、ぞっとする描写がしっかり怖い。
3つ目、怪異の理由にミステリー仕立ての「理由」がある。祓ったり倒したりするときにもこの「理由」が生かされる。
ホラーって、怪奇現象⇒関係者の抱える問題⇒解決へ、という推理物にも似た構造があると思うんです。ここがしっかり満たされる上、章の最後に種明かし的な解説をはさんでくれるのも親切でありがたい。
自分の予想があっていたか答え合わせをしたいので、「読者の想像にお任せします」にならないところが好き。
てっぱんホラーの条件を満たしているだけでなく、キャラが立っているのも楽しいです。
主役二人の関係が、恋愛とバディ物のあいだを行くのも、すっごく好み。恋人である前に、仲間であってほしいから。
それからもうひとつ、怪異の「陰の気」を払うように食事シーンが出てくるのも楽しい。本当においしそうですよ。
最後に、怪異に関わる「被害者」とも「加害者」とも思える登場人物たちの人間ドラマも見事です。
単に怖いだけではなく、生きた人間の悲しみや憎しみ、嫉妬や憎悪が絡んでくるから、共感できることでさらに鳥肌が立つ。
というわけで、ホラー好きなら読まなきゃ損です。「ケース」ごとに伏線は回収されていくので、短めの「ケース1」だけでも読んでみてね!
万亀山(まきやま)かなめは、「心霊解決センター」でアシスタントとして働いている。上司で邪祓師の卜部(うらべ)は、ぶっきらぼうでちょっと変人。卜部のもとへ持ち込まれる事件は、他でさじを投げられた難事件ばかり。さあ、今日も新たな怪異に関する謎がふたりのもとへ持ち込まれたのだった……。
オススメポイント1
じわじわくる恐怖がやみつきになる。何気ない日常からだんだんと暗転していく描写が秀逸!
オススメポイント2
卜部とかなめのやりとりが良い味をだしている。かなめは、ごく普通の女の子だが変人で不器用な卜部を一生懸命サポートする姿がかわいい!
オススメポイント3
独特の世界観にはまる。現れる怪異は、オリジナリティあふれる独特なもの。事件の背景も丁寧に解説されるので作品の世界に没頭できます!
以上の理由でとってもオススメです!!