第4話 命名~ストレージ~その性能は?
第1章 第4話 命名~ストレージ~その性能は?
双子はエドワード、ディアーネと名付けられた。
エドワード・エレウテリア。ディアーネ・エレウテリアの誕生である。
名前を考えたのはコンラートだったが、彼はそれ以外は全くの役立たずではあった。まあ、そんなもんだね。
ベアトリスの状態も悪くない。というか特に問題はない。
体力も回復しつつあるし肉体的なダメージはあまりない。おっぱいも十分出ているので健康な母親である。
出産直後ということでおとなしく寝ているように言われているが元気なものだ。
「こーら、ある。母様ともあそべ~」
なので退屈してアルビスを構い倒している。
「あーん」
アルビスは幼い弟妹から引き離されて不満顔。もうアル君は双子に首ったけだった。もはや母親などどこ吹く風である。
ベビーベッドのそばで飽きもせずに双子を眺める。偶に指を出して握り返されては嬉しそうにしている。父親がへたくそに赤ちゃんを抱っこしようものならなぜか突然痛みに襲われたりしたりする。
ベアトリスもアルビスに対して遠慮がなくなった。
遠慮をしていたのはアルビスだけではなかったのだ。
アルビスを引き取ったものの少し距離を取って接してくるアルビスに、実際は母親ではなく、本当の母親の死の原因を作ってしまったという負い目もあり、そして自身、母となった経験のなかったベアトリスもどうしても一歩引いてしまうところがあったのだと、双子を産んで気が付いた。
なのでベアトリスは遠慮をやめることにした。
いや、やめることができるようになった。
生後数日の双子にはできない抱っこしたりくすぐったり、キスしまくったりがアルビス相手ならできるのだ。ならレッツゴーである。
「けひゃひゃひゃ、やめれやめれ、うにゃー」
今日も楽しそうなアルビス達の声が響く。
そんな日々なのだが…
(うーむ、二歳児というのがこんなに不自由なものだとは…)
とアルビスは辟易していたりする。
目を放してもらえる時間がないのだ。
普通二歳児をほったらかしにしたりはしないのだけど。暇を持て余したベアトリスはアルビスを放さない。一人になるのは昼寝の時だけ。でも昼寝だから本人が寝ているので意味がない。
おかげで精霊が生まれて、しかしその力を試したりとか、権能を試したりとかそういったことが全くできないでいる。
(だがそれも今日までだ。ふっふっふっふふふのふ)
アルビスは不敵な顔で笑った。
「あー、アル君が変な顔してる。かわいいー」
いえ、不敵な顔ですよ、不敵な顔。ニヒルでかっこいいでしょ。
「「「はい、かわいいです」」」
あれ~?
まあ、話は戻るがさらに数日たって今日はベアトリスの床払いの日なのだ。
床払いというのは出産や大病で寝込んでいた人が体力を取り戻して普通に生活するようになることだ。
ベアトリスは『もう大丈夫』ということで今日から日常生活に復帰する。
となるとどうなるのか。
「おひるね、ふりーたいむ」
そう、お昼寝している間は監視の目が外れるということである。今までベアトリスが放してくれなかったからね。
「もてるおとこはつらいぜ」
こいつ二歳児。
さあそんなわけでお昼寝の時間がやって来た。いよいよ空間収納のテストができる。子供ベッドに寝かされ、寝たふりをするアルビス。
双子はもともと一日中寝ている。
オシメかオッパイで泣くまでは自由時間である。
「いえー」
楽しい楽しいストレージであった。
使い方はなんとなくわかる。大筋では分かるのだ。クロノに名前を付けて契約が完了したときに基本的な使い方がなんとなく理解できた。そういうものらしい。
アルビスはちらと双子を見る。幸せそうに寝ていた。
「よし、しゅうのう」
その瞬間空中に、地面と平行に魔法陣が展開した。文字などが書かれていない幾何学的で複雑なやつだ。
目標にしたのは部屋の隅に置かれていた長椅子。
空中の魔法陣は金色に輝き、その魔方陣から金色の光の蔓が伸びてくる。ところどころ葉っぱのように見えるパーツが付いているので蔓に見えるのだ。
それがソファーに絡みつき、そのままソファーを釣り上げた。
ソファーをクレーンしているような感じだった。
ソファーはそのまま吊り上げられ、魔法陣に引き込まれていく。
「おおー、しゅげー」
そして収納されたことが感覚的にわかった。ストレージを意識すると入っているものが分かるのだ。
ただちょっとわかりずらい。
「うー…(もっとタブレットみたいな感じだといいのに…)」
そんなんだったらもっと使いやすいだろうな?
そんなことを考えていたら。
目の前に、透明の膜がかかったように感じた。
ほとんど邪魔にならないのだけれど、フィルターがかかったような感触。
「うーん(これって…)」
アルビスは視界の中の今度は椅子を意識する。そしてそれに手を伸ばす。
もちろん手の届くような距離ではない。だがモニター画面を振れたようにそれに触れた途端、椅子がマスキングされた。
「おお、(これは)」
そうしたら次に収納のボタンが生まれ、それを選択すると先ほどと同じように椅子が収納される。
「じゅごい(視界すべてがタッチモニター)」
直接触れない距離でも視界上のそれに重なる位置をタッチするとそれが選択されるのだ。
では取り出しは?
取り出そうとすると視界の中にアイコンが生まれ、何が入っているのか表示される。
「ふむふむ(なるほど、階層構造だ…フォルダーが作れるわけだな…)」
ドロップしたりドラッグしたり、スワイプで画面を切り替えたり、フォルダーを二つ開いて移動も可能。かなり使いやすい。
取り出すものを選択し、取り出しキーを選択するとさっきとは逆に魔法陣から蔓に吊るされたアイテムが出てきて任意の場所にそれをおろす。
『お見事であります』
感動だった。
「これって…(どのぐらいの量が入るんだろう)」
『そうでありますな、現状ではこの家ぐらいでありますか。魔力依存ですので魔力が育てば大きくなるであります』
アル君の家は80坪ぐらいの平屋です。
貴族としてはつつましい感じ?
「にゃま(生ものはどのぐらい持つのかな?)」
『それは現在は固定で一日が一年ぐらいであります』
つまり一年たつと収納の中では一日分の時間経過になる。ということだ。
「しゅごい」
完全な停止とか時間調整とかはできないようだが入れたものがそれだけ長持ちするのであれば有用性は高い。
鮮魚だって仕舞って置ける安心感。
その後アルビスは習熟のために(楽しかったから)ものの出し入れを繰り返した。
慣れればかなり使いやすい。
そんなとき。
ガチャ。
「あら、アル。おっきしてたの?」
びびくん。
「ごめんごめん、吃驚しちゃった?」
(ヤベーヤベー、マジビビった。うん、家具を全部出している時でよかったよ)
「ちゃんと寝んこできたかな~」
「うん」
元気に返事してギュッと抱き付く。
子供はこれでごまかせるのだ。
「さあ、お母さんは編み物をするからアル君はいい子で遊んでてね~」
そう言ってベアトリスは双子の様子を確認し、椅子に座って編み物を始めるのだった。
そう、さっきまで頻繁にあっちとこっちを行き来していた椅子に。
ちょっとドキドキした。
(大丈夫、別になにか変わったり…やべっ、コップ出してなかった)
収納に残ったコップ一つ。とりあえず気づかれないように祈るアルビスだった。
ちなみに大丈夫でした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※ アルビス二歳。双子〇歳
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます