第9話 精霊レベル~魔法流派~精霊武器

第9話 精霊レベル~魔法流派~精霊武器



 精霊レベルⅠ(属性一つ)・属性ごとの権能。

 精霊レベルⅡ(属性二つ)・第二属性権能。精獣召喚。

 精霊レベルⅢ(属性三つ)・第三属性権能。精霊武器召喚Ⅰ。


『ということになっているであります』


「へー、なんか面白そう」


 アルビスはワクワクした。


 聖獣召喚というのは精霊を召喚獣として呼び出すというもの。

 精霊は他人には見えないし、触れることもできない。単独行動もできないのだが召喚するとある程度の距離で派遣できるようになるし、他の人にも見えるし触ることもできるようになる

 とはいっても精霊が大きくなったりはしないので現在のレベルⅢで30cmぐらいの大きさだ。


 それでももともとが10cmなのでレベルが上がると大きくなるシステムらしい。

 あとクジラの頭の王冠がレベルアップの度に立派になっているように見えた。

 頭の上に浮かんだ三つのパーツで構成された王冠でちょっとかっこいい。


 そして召喚した後の使い道としては、アルビス自身が離れないといけない場合、双子のそばに連絡係として残して置ける。

 しかも見えるし触れる状態なので子守にもなる。


「すごいおやくだちー」


 そうか?


 逆にアルビスが留守番をしてクロノを派遣することもできる。

 しかも制限はつくようだが権能も使えるので役に立ちそうな気がする。

 だが反面魔法が使いづらくなった。


『仕方ないであります。お手伝いができないでありますから』


 そう、精霊がいると魔法が使いやすくなるというのは明確な理由があった。

 契約者が魔法を成功させると精霊はその魔法の発動プロセスを記憶して、その処理を手伝ってくれるのだ。


 最初は自分でイメージをくみ上げて魔法を作る。だが毎度毎度イメージを一から作るのは大変だ。

 だが一度発動した魔法はその魔力の流れを精霊が記憶し、制御を一部肩代わりしてくれる。

 何度も何度も繰り返せば精度はあがるだろう。


 これは精霊を持つものと持たない者の、発動できる魔法の規模の差として現れる。つまり精霊がいると高度な魔法が使えるということだ。


 なので精霊を召喚して出張させるとその手伝いがなくなるので大変になるのは道理というものだ。

 これはなかなか使いどころが難しい。


「でも、もともとは自力で発動していたわけだから、練習すれば何とか?」


 うん、その可能性はある。


「それに常時魔法を使っているわけでもない」


 その通りだ。

 何事もやり様なのだ。アルビスはそれをよく知っている。


「じゃあ次だ、気になるのは精霊武器召喚だね」


『ご説明するであります。

 精霊武器召喚は魔法で設定された武器を召喚する権能であります』


 それは単に武器を作るというのではなく精霊と協力して武器を『生み出す』権能と言った方がいい。


『よくあるのが炎の剣とか、風の弓矢とかでありますか?

 精霊の持つ力と契約者のイメージで力を具現化するであります。

 特定の能力を持った武器を設定できるでありますからなかなか強力な武器になることもあるであります。

 過去に活躍した武器で歴史に残るようなものもあるでありますよ』


「おお、なんかすごそう」


 それはつまり精霊の持つ力をイメージで形にするのだとアルビスは了解した。


『必要なのは形、名前、能力であります。能力は現在マスター殿と私の力で実現可能なものに限られるであります』


「こういうのってかあさまも持っているのかな?」


『母上どのはもってないでありますな。母上殿の精霊はレベルⅡであります。精霊武器を作るにはあと一つ属性が必要であります』


「え? 母様って属性二つなんだ」


 アルビスはびっくりした。自分でもう三つなので、もっとハードルがひくいかとおもったのだ。


『それはこの世界の魔法事情に寄るでありますよ。

 この世界では魔法は流派ごとに分かれていて、水魔法は水魔法、火魔法は火魔法でいろいろ使おうとする人はほとんどいないであります』


 アルビスは自分がポコポコ魔法を使っているので知らないのだがこの世界で魔法を覚えるには師に付いて教えを受けるというのが一般的だ。

 例えばベアトリスの場合『水神流錬成医法門』という流派に属している。水の回復魔法を中心にした流派で、医薬品の錬成なども得意とする医療特化の魔法流派だ。

 彼女はまだ幼いときに水属性の才能を発現し、その流派の門をたたき、弟子入りして魔法を教わった。

 当然教わった魔法は水属性中心になる。

 そして現在は水神流の医療魔法士ということになる。


 先日ベアトリスが村の子供達に魔法を教えていたが、あのように師匠が手本を見せ、教え、それを繰り返し練習することで人は魔法を覚えていく。

 そして教えるのが水魔法のエキスパートであるベアトリスなのだから、子供たちが教わるのも水魔法が中心になる。

 ベアトリスだって他の属性のことはよく知らないのだ。


 なので普通の魔法使いは自分の使う魔法が決まるとその系統の魔法ばかりを練習することになる。

 結果、魔法士は使う属性が限定されてくるという現実が出来上がる。


 すべての属性の魔法を完璧に使いこなし、それを教えられる魔法使いなんて存在しないのだ。


 魔法士と呼ばれる才能のある人が50人に一人ぐらい。

 精霊を得て魔法使いとして活動する人はもう少し少ない。環境的に魔法使いになれない子もいるからだ。


 そして大体が属性一つ。

 二属性を持っている魔法士は魔法使いの10人に一人ぐらいだろうか。

 さらに三属性となるともっともっと少なくなる。


 ベアトリスは水と火の属性を持っているから実はかなり優秀だったりする。

 魔法の属性を増やすのはそれほど難しいといわれている。


 しかしその話を聞いてもアルビスの気持ちは変わらない。


「目指せコンプ」


 ゲームでアイテム収集とか魔法コンプとかにのめり込むやつ。いるよね。


 まあ、それはさておき精霊武器だ。


「うーむ、現在の属性で作れるもの…自由に空とか飛べるかな?」


 時空属性があればできる気がする。

 最初は無理しない方がいいだろう。

 それでもこの自動車もない世界において、自由に空を飛べるのは間違いなくアドバンテージだ。


「空と言えば翼か…翼、翼って言ったら有名な杖があるよね。

 あれって確か空とべるんじゃなかったか?

 それにギリシャ神話だし、クロノとの相性もいいかも。時空ってイメージあるし、無属性も役に立つかな。

 えっと、確か本体はまっすぐで、二匹の蛇が巻き付いていて、杖頭に一対の翼のある杖…」


『わわわっ、始まってしまったであります』


 クロノがバタバタするとアルビスの目の前にイメージが組みあがっていく。まっすぐな杖に絡みつく二重螺旋の蛇…


「あかーん」


 蛇のデザインがダメだった。


「幾何学的なのはいいけど、生物的なデザインは苦手なんだよ」


 その蛇はすっごくデフォルメされていて『かもーん』とか言うと色の付いた蓋を跳ね上げて飛び出してきそうなデザインだった。


「よ…よし、もともとの伝説ではたんなる螺旋という話もあったからそれで行こう。

 よし、いい感じ、頭に多面体の宝玉があって、翼が一対、両側に広げるのもちょっと面白くないから鳥が翼を上げたような感じで…うん、いいデザインだ…あれ?」


 いまになって目の前で展開するエディターにびっくりしたりしているけど、まあ、そういうこともあるかとかっぼる。


「あとは名前と、能力だっけ?」


『ハイであります、それが決まると生成が始まるであります』


「よし、じゃあ杖の名前は当然【ケリュケイオン】だ…あうっ!」


 名前を付けた瞬間、ぱちんと火花が散った。


 何事?

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