第5話 魔法~魔力~教えを乞う
第1章 第5話 魔法~魔力~教えを乞う
「ねた?」
「はい、ぐっすり」
ベアトリスの言葉にメイドの声が答える。この家には三人メイドがいて二人がおばちゃんだ。
屋敷とはいっても日本人の感覚だと大きめの戸建ての家なのでそんなにメイドなどという人種は必要ないのだが、三人いる。
旦那を無くして生活に困っているおばちゃんとか、家族を亡くしていく当てのない娘とかがメイドをやっているのだ。
アルビスの感覚だとメイドというよりはお手伝いのおばちゃん達。である。
母ベアトリスは双子にお乳を与えていて、メイドの一人がアルビスのおなかをポンポンして寝かしつけようとしていた。
アルビスは絶賛寝たふり中。
子供が三人とも寝付いたのを確認して彼女たちがそーっと部屋を出ていく。
これで双子が泣くか、アルビスのお目覚めの時間までフリータイムだ。
まあ、たまに確認に来るので油断はできない。
だがそれもいい訓練である。とアルビスは思っている。
アルビスは起きだすとまず自分に【ハイ・ヒーリング】の魔法を使った。
これはベアトリスの出産のときにアルビスが使った魔法だ。
特徴は対象をモニターしながら必要な回復を適宜与えていくというもの。
名前はどうやって決まったかというと勝手に決まった。
というかもともとあった。
『魔法はイメージでありますからな、同じような魔法でもそれぞれ違いがあったりするでありますよ。そういうのも含めて魔法というのは体系があるであります』
クロノはそう教えてくれた。
つまり魔法はイメージで呪文とかは…使ってもいいけどイメージの補助的な意味しかないというのだ。
だがそれでめいめいが勝手な名前を付けると何が何だかという感じになってしまう。それを避けるためというわけではないのだが、魔法は同じような魔法は同じ魔法として定義されるようになっていた。
世界の理として。
つまりアルビスが使った『総合回復魔法・調整機能有り』は、既存の『ヒーリング』という持続的な回復魔法と類似しているので【ヒーリング】であると規定されたわけだ。
その中で高度な方、【ハイ・ヒーリング】として。
じゃあそれで魔法が【ハイ・ヒーリング】の魔法になってしまうかというとそうでもなく、あくまでもアルビスの『総合回復魔法』としての性能は維持される。
そのくせもともとあったハイ・ヒーリングの魔法の安定性も加わり、調整が簡単になって魔力消費も抑えられる。
『つまり、マスター殿は――ハイ・ヒーリングを習得しました、個人の技能によって性能が上がります――といった状態になったであります』
この判断を誰がするのかはあやふやだが、精霊と契約していないとこういう現象は起こらないのだからそういうことなのだろう。
ちなみに既存の魔法にカテゴライズできない魔法は完全オリジナルとして登録される。名前も自由につけられるのだ。つまり以降はそれが基準となる。
最初につくった重力魔法はそのまま【グラビトン】となったし、睡眠を効率よくとるために作った魔法は【タンクベッド】と名付けられた。
SFなんかに出てくるあれである。わずか二時間で八時間分の休養が取れるとかいうやつ。
じつにうらやましい魔法を作ったものである。
さて、というわけでアルビスはちょっと座って自分に【ハイ・ヒーリング】をかけて、ゆっくりと体調を整えてから立ち上がった。
『今日も絶好調でありますな。この調子だと2番目の属性は回復魔法になりそうであります』
「うん、ひつじぇん(必然)」
それが精霊の成長である。つまりレベルupね。
人は誰でも魔法が使える。
簡単な小規模魔法、つまり生活魔法と呼ばれるものならば練習で使えるようになる。
だが魔法使いと呼ばれ、高度な処理能力、多くの魔力を必要とする魔法を使うものがいる。
その両者の間にある決定的な違いが『精霊』なのだ。
精霊は魔法を使うときに補助的な役割をしてくれる。
魔法を使うときにその魔法の構築を助けてくれるのだ。
それは魔法使いとともに、精霊も魔法を覚え習熟していくのに近い。
つまり精霊も成長していくわけだ。
そして魔法には属性があり、精霊はその属性の権能を持つ。持てるようになる。
権能があるとその属性の魔法は格段に制御しやすくなるだろう。
その属性は魔法使いがそれを使いまくり、精霊がそれに慣れていくことで増えていく。
レベル1の精霊がレベル2の精霊になるわけだ。
今一番使っているのかハイ・ヒーリングとタンクベッドなのでともに回復魔法。つまり回復属性。次にクロノが獲得するのはこれになりそうなのは当然のことだと考えられる。
だがそれに甘んじてのんびりしていることはできない。
「もっちょ(魔法を作らねば)」
魔法おもしろい。魔法大好き。状態である。
まあ、地球人からしてみれば当然の流れだろう。趣味は広いがアルビスは多少オタクが入っているし。
「ぞくせい? (属性って何があるの?)」
アルビス君コンプ目指す気満々である。この状況なら当然だよね。
『そうでありますな、まず火、風、水、土の四つが基本四属性と呼ばれるであります。そのほかにマスター殿が使った時空、そして現在使いまくっている……回復?……これが特殊四属性のうちの二つであります。
ですのであと二つ? あるのでありますが…これは秘密になっているであります。自分で発見しないといけないであります』
会話の端々にちょっと微妙なイントネーションを感じたが、それは指の間をすべるようにこぼれてしまった。
今は魔法を試すことの方に気を取られたのだ。
だが、とアルビスは考える。
(火魔法は分かるよね、物を燃やせばいいんだ。うん、やり方はいろいろある。
土魔法も風魔法もわかる。そこら辺にあるからそれを動かせばいいんだ。
でも水魔法ってなに?)
ということだ。
水だってそこらへんにあるじゃないか? と思うかもしれないが水がある場所は土や風に比べれば限定てきだ。
生き物にとって一番身近なくせにある場所は限られる。
大気中にも存在するが、そんなもの集めたところでたかが知れているのである。
「みずまほうってにゃにがある?」
『ウォーターボールとかあるでありますぞ』
「どうやって?」
水の玉を作る水はどこから来るんだろう?
『それは魔力からくるでありますよ。マナは万物の源。水であれ土であれ、魔力で顕現させることはできるであります』
「ふおっ、じゃあまりょくでものがつくれる?」
エネルギーの物質変換。夢の物理現象。
質量をエネルギーに変える方法は、実は一つある。核爆発だ。
逆の現象は理論上はロケットなどを光速で飛行させると起きると考えられている。
速度が光速に近づくほどエネルギーは質量に変換されるのだ。
でもまあ、ここら辺は無視してくれていい。
ただ読書家のアルビスは知っていたというだけの事。
『残念ながらそれは神の御業であります。人間に許されているのは一時的にそのフリをさせることまででありますな。
時間経過で元の魔力に戻ってしまうでありますよ』
「ふおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
アルビスは震えた。
魔法の何たるかをこの時悟ったようなきがしたのだ。
試しに水を作ってみる。
一瞬何かが脳裏をよぎったような気がした。
そしてアルビスの目の前にゆらゆらと水の玉が作られていく。
同時にその魔力はアルビスの魔力から供給されていて水玉が大きくなると同時に魔力が減っていくような感じがした。
だが水は出来た。
アルビスが力を抜くと水は下に落ち、ベッドを濡らす。
濡らすのだがそれはどんどん魔力に還元されて消えていく。つまり乾いていくのだ。
そして後にはきれいになった布団が。
「あっ、きれい」
うん、お掃除とかにも使えるかもね。
「ちゅまりまほうは、まりょくで、イメージを、けんざいか、さしぇることなのね」
(つまり魔法は、魔力でイメージを顕在化させることなのね)←訳
ストーン系の魔法もそう。魔力を使って一時的に石を顕在化させるのだ。
回復魔法などは魔力を生命力などの力に、つまりエネルギーにして回復をもたらすものなのではないだろうか。
素晴らしい全能感が襲ってくる。
ついおどりだしたくなるような気分だった。というかおどった。目が回った。
『あー、まりょくぎれであります、魔力が足りないでありますよ』
少し眠るといいですよ、おやすみなさい。
寝落ちしました。
◇・◇・◇・◇
目覚めて。
「まりょくくんれんをしゅる」
『順当でありますな』
「おちえて」
『まかせるであります』
アルビスは教えを受けるものとしてちゃんと座って頭を下げてクロノにお願いをした。
果たしてどうなるのだろうか…
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