第7話 暦~第2属性~第3属性
第1章 第7話 暦~第2属性~第3属性
魔力修業は順調だった。
そして半年ほど経過した。
現在は七月、夏である。
とはいってもこの辺りは前述の通り豪雪地帯。つまり北国のイメージだ。
なので夏はかなり過ごしやすい。
でもまあ、水遊びなんかはするのだけどね。
期間は短いけど。
ちょっと話はそれるがこの世界一年は十二ケ月になる。
冬至の日を新年として春分、夏至、秋分で四分割する。すると一つの区切りが90日になる。これをさらに三分割して一の月、二の月と区分したのがこの世界の暦だ。
なので一か月は30日、全部同じ。なので1年は360日…にはならずに2、3日余るのだ。これは公転の関係でどうしようもない。
なので年の初めに【遊び日】という日を設けて2日、3日を調整して362~363日が1年となる。うるう年が頻繁にあると思えばいい。
因みに月というのは分かりやすく翻訳しているだけで、この世界の天体としての月は二つあって、満ち欠けがかなり複雑なので太陰暦のような暦は存在しなかった。
太陽暦の方がやりやすかったのだ。
なので空の月と暦の月は無関係である。
さて、本格的に魔力訓練をするようになって半年が過ぎたわけだが、クロノに言わせると『かなり上達したであります』ということになる。
魔力の流れるライン、俗に魔力回路と呼ばれるものも順調に成長し、それに伴って魔力量も伸びたし、同時に精製も進むので魔力強度も上がっている。
「めざせ、こんぷ」
ノリノリである。
ただまだ二つ目の属性は来ない。ちゅちザンネン。
そして弟妹は生後半年になった。
感情表現も豊かになったし、最近はハイハイもするようになってかわいい盛りである。
「うー」
「ああー」
二人してパタパタ這い寄ってくる姿はもう、抱きしめずにいられない。
その時の笑顔が可愛い。もうべたぼれである。
よだれやうんちもこの二人のならば平気なのだ。
そのせいかはたまた必然か、直接魔力が使えるようになってしまった。
魔力神経が発達したことで体中に魔力が回り、それは身体機能の上昇に寄与した。つまりアルビスは2才児と思えないほどに運動能力が高くなった。
じつを言えば喋るのももう普通に喋れたりする。
だが所詮二歳児。そして双子は二人。子守をしていても手が回らない。
そこで役に立つのが魔力。
「魔力は力」
きっかけは段差から落ちそうなディアーネを支えようとしたことだった。
距離があって間に合わない。
ああ危ない。と思ったときに魔力がブワッと噴き出してディアーネを受け止めた。
魔力が集まって物理的な力になったのだ。
それは覚醒の時。
それ以降アルビスは常時うっすらと魔力を放出するようにした。
最初は加減が分からなくて周囲のコップだの花瓶だのがカタカタ揺れてメイドさんたちが不気味がっていたりしたのだが…
(これがポルターガイストか…)なんて納得したりして。たぶん違うよ。
まあ、練習の結果、魔力を放出し、自分の周囲を自分の魔力でうっすらと染めることができるようになった。
弟妹がはしゃぐときは、触れないように、しかし近くに魔力を待機させ、何かあったときに対応できるようにしておく。
そのうっすら魔力はアルビスの魔力なのでつながっている感覚があって、そこから得られる情報から周囲の観測ができる事実に気が付いた。
つまり魔力を新しい感覚器官として利用できる事実に気が付いたのだ。
なのでこれも練習した。
うっすらと、ごく薄く魔力を放出する。
魔力は物を透過したり跳ね返ったりして情報をもたらす。
至近距離の情報からそれが何なのか確認すると次からは魔力だけでそれが認識できようになる。その情報を蓄積していくとどんどん魔力で知覚できる範囲が鮮明になっていく。
知らないものを正確に把握するのは最初は難しかったが、経験を積むとそこになにかある。こんな形をしている。持っている魔力が強い弱い。みたいなことは十分に把握できるようになり、アルビスの世界は広がった。
部屋の中にいても自分の周囲10mぐらいはしっかり把握できるようになったのだ。ぼんやりでよければもっと。
「うん、魔法ってすごいね」
『すごいのはマスター殿だと思うであります』
ちょっとクロノがあきれたりして。
そんなある日。
『マスター殿、二つ目の属性を獲得したであります』
「おおー、ちゅいに来たか回復魔法」
偶に噛みます。
『いえ、来たのは力属性であります』
「なんね?」
はいアルビス君の二つ目の属性は『力属性』だった。
基本属性ぶっちぎりで色物を集めるアルビス君。
色もの魔法使いとか名乗るべきだろうか?
まあ、それはともかく力属性とは何なのか?
『普段マスター殿が弟妹達を支えている魔力で物を触ったり、調べたりする能力でありますよ』
「あーーーーーーーっ」
なんか納得。
ハイ・ヒーリングはいまだに毎日使っている。タンクベッドも使っている。でも一日中使っているのがこの魔力の直接制御だ。
もはや魔力はアルビスのもう一つの目。もう一つの手になっている。
使用頻度は桁外れだった。
「むむう、なのでそちらが早くなったか…」
『それで、力属性の権能でありますが『隠者の手』というであります』
パチパチと何かが繋がった。
名前を聞いた時にそれが何なのか、基本性能が理解できたのだ。
それは見えない手。本来届かないところまで届く力ある腕。
アルビスは部屋のドアに目を向ける。ドアノブが回ってドアが開いた。かちゃりと。
ドアとの距離は結構ある。そうでなくてもノブはまだアルビスの手の届かないところにあるのだ。
そのドアが簡単に開いた。いや、もともとうっすら魔力で出来たのだがあれは魔法として使っていた。
今は自分の手の延長のようにして考えるまでもなくできる。
今度は壁に目をやる。
でも見ているのは壁の向こう。家の外、庭の中。そこに落ちた一本の薪。
それを持ち上げようとする。
簡単に持ち上がった。
そのうえで雑巾のように絞る。
メキメキと音を立て、つぶれねじれていく薪。
「おー、すごい、すごい威力だ。威力がすごい」
ちょっと壊れぎみ。
しかし確かにすごい。
隠者の手は離れたところに自由に力を及ぼす権能だった。
見えない手と表現されるが実際はもっとふわっとしていてもっと細かく制御が利く。サイコキネシスである。
そしてこの属性はエネルギー属性。別の言い方をすれば無属性の力だった。
魔力で離れたところに力を及ぼすちから。
まるで魔力が自分の手であるかのように感触もある。だから知覚にも使える。
魔法のように意識的に制御する必要もなく自然に操れる力。
アルビスの世界はまた広がった。
なかなかワクワクする力だった。
「よし、せっかくだからこの力で魔法を作ろう」
『おー、パチパチであります』
三日後。
『マスター殿、三つ目の属性が生えたであります。生命属性であります』
アルビスはずっこけた。
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現在7月
アルビス2歳10か月
双子6か月
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