アルビス…自由なる魔法使い

ぼん@ぼおやっじ

第一章 幼少期

第1話 精霊~アルビス~ストレージ

第1話 精霊~アルビス~ストレージ



「くじらだ」


『クジラでありますか?』


「しゃべった」


 舌足らずな発音でアルビスは目の前の怪奇現象を見た。

 アルビス2歳。初めての第3種接近遭遇な春だった。うん。


『クジラでありますか?』


 もう一度聞いてきた。

 それは全長10センチほどの、空を飛ぶ、かなりデフォルメされたデザインのクジラだった。ぬいぐるみチック。


「はっ、ちなう、クジラは見た目だ。なまえは…クロノにする」


『了解であります。吾輩はクロノ…うわわわわわっ』


 生まれたらすぐに名前を付けなくてはならないといわれていたのだ。それを思い出してアルビスは〝それ〟に〝クロノ〟と名付けた。その瞬間クジラの表面に火花が散った。

 そして少し姿が変わる。


 まず胸鰭が大きくなった。そして体に文様が浮かび上がった。クジラなので上半分は深い深い蒼。下が筋の入った白なのだが黒い部分にちょこっと金の文様が浮かび上がったのだ。

 そして頭のてっぺんに小さな王冠のような飾りが生まれた。


「ますますおもちゃちっく」


 まあ、確かにそうなのだが、精霊だというからいいんじゃないかな? とアルビスは納得することにした。

 だがクロノの方はそういうわけにはいかなかった。


『こここ、これは何でありましょうか、吾輩、こんなことは初めてであります』


 ちなみにこいつは生まれたばっか。

 さて、精霊が出て来た段階で御分かりだろうがこれはファンタジーである。

 剣と魔法の世界なのである。


 そしてアルビス君は転生者。

 銀の髪に蒼い瞳の美幼児、いや、乳児か?

 まあ、かなり可愛いよ。


 そのアルビスは腕を組んで考える。二歳児なので可愛いしかないのだが、本人はまじめに考えているつもり。


「なまえのせいだとおもうじょ」


『名前でありますか?』


「そう、はむかみさまがなまえだいじっていってた」


 アルビスは思い出す。ハム神様との出会いを。

 あれはひと月ほど前になる。

 アルビスが昼寝をしていると『のわーーーー、でござるーーー』という声が聞こえて目をさました。

 びっくりして起き上がると煙突から、というか暖炉からなんかもこもこした丸いものがはみ出している。

 これはサンタクロースなのかはたまた泥棒なのか? と警戒したアルビスだったが出て来たのはハムスターだった。

 全長二メートルほどの巨大ハムスター。

 どうやって煙突を通ったんだろう?


 アルビスはその奇怪な生物に対して即座に行動した。

 ダッシュしてお腹に抱きついた。


 想像以上のモフモフに大変満足した。

 彼はもふらーだった。


『いやー、参ったでござる。ここまで歓迎されるとは…初めましてでござる。それがし、フロガ・マギラスというでござる。

 一応神様をやっているでござるよ』


 頭を掻きながら照れるハムスター。


「おおー」ぱちぱちぱちっ、アルビスは拍手した。


『いやー、ありがとうでござる。ありがとうでござる』


「はむかみさま」


 名前が難しかったのでそうなりました。大体二歳児にそんな面倒くさい発音は無理なんだよ。

 そしてハム神様が言うには『自分はアルビス君のもとに神様との盟約に従いサポートのためにやって来たでござるよ』と宣った。


 原因はアルビスの目の前にコロコロ転がっている光の玉。

 これが精霊の卵だった。


 この世界には魔法がある。

 誰でも魔法が使える。一つか二つぐらいは。

 これを生活魔法とか言うのだ。


 だがそこどまり。それがほとんどの人の一生だ。


 だが中に魔法使いと称して支障のない人もいる。

 生活魔法とは違う強力な魔法とかたくさんの魔法とか使える人がいる。

 それが魔法使い。50人に一人ぐらいだろうか。


 精霊を連れているのが一人前の魔法使いの証拠だ。


 何が原因か、どういう加減なのかは…


『秘匿事項でござる』


 ということなのだが、その人が修業をしているとある日いきなり、精霊の卵。というのが発生することがある。

 この精霊の卵。孵ると当然精霊になって。精霊がいると魔法使いにとってはいいことずくめだったりする。

 なので精霊は神の祝福。などと言われる。のだが、アルビスの前に転がっているのがそれであったりする。


『普通は親や周りの人が精霊の卵に気が付いてフォローするでござるよ。アルビス君はまだ2歳。2歳児が精霊の卵を持ってますとか言っても誰も相手にしてくれないでござる。

 多分気が付かないでござる。

 そのためにそれがしがフォローに来たでござる』


 普通精霊の卵は魔法の修業をしている人の所で発生するものだ。周りには同じような精霊憑きが多いことが普通。

 でなくてもこういうのは大体10歳ぐらいで起こる現象だ。

 先達の教えを受けられるので大体困ることなく精霊が孵る。


 だがアルビスの場合はどうだろうか。

 さすがに周りのフォローも当てにならない。


 なのでこういう場合、精霊の先輩、つまり『はむ神様』のような『小神様』と呼ばれる存在がいろいろ教えてくれるのだ。

 まあ、めったにないのだけどね。


『精霊はアルビス君の魔力をもらって生まれるでござる。つまりアルビス君の分身でもあるでござる。常にアルビス君の周りにあって、アルビス君と成長し、そしていつか偉大な存在に…なるかもでござる。

 なので大事なのは魔力修業をちゃんと続けること。そして肌身離さず持っていること。そして実際に魔法を使うことでござる』


 この三つを教えるためにはむ神様はやって来た。

 特に重要なのが三つ目。魔法。

 二歳児に魔法を使わせようという大人はまずいない。だからはむ神様の説明がいるのだ。


 ハム神様の言うことにゃ。


 この世界には『マナ』という力が満ちているらしい。

 万物の源、すべての力の原型であるという。


 言ってみれば世界の生命力であり、生きとし生けるものはこのマナを呼吸して生きている。

 それは自身の生命力の源でもあるのだ。


 そして人は、この際、人に限定するが、このマナを取り込んで魔力という力を生成する。

 これが魔法の動力源である。つまりmpね。


 この魔力は本人が生成したものだから、本人の意思に感応して稼働する性質がある。

 そう、この魔力に意思を伝えることで魔法は発動するのだ。


 とまあ、こういうことを教えに来てくれたわけだね。

 アルビスは感謝とともにはむ神様を敬った。


『うんうん、その心を忘れてはだめでござるよ、精霊というのは人との交流によって育つものなのでござる』


 そう言うとはむ神様は精霊の卵をアルビスのおでこにぺとっと張り付けた。


『これでもう無くすことはないでござる。張り付いているのでちゃんと育つでござるよ』


 ということはそうでない場合もあるのだろうか?


『あるのでござる。

 育てるための努力をしないとこの卵は干からびて消えてしまったりするでござる。

 精霊はそれがしたちの昔の姿でござる。

 それがしも生まれたばかりの時は小さい精霊でござった。

 なのでそれがしたちは若い精霊が沢山生まれ、そして成長してくれることを願っているでござるよ』


 つまりハム神様たちにもアルビスのような子供をフォローする意味があるということだ。

 目の前の巨大ハムスターがこのポヤポヤした光の玉の成長した姿だと聞いてアル君はがぜんやる気が出た。

 我が手にモフモフを。それをスローガンに。


 そして頑張った。


 で生まれてきたのがこのクジラ。なぜクジラかはよくわからない。わかるのはもふもふではないということ。

 だがアルビスは思う。


(モフモフもいいがぷにぷにもいい)


 まるでスライムのようなもちもちぷにぷにした感触は気持ちよかった。だから許す。


 そして思い出した。はむ神様に名前というのはとても大事だといわれたことを。


『名前は大事でござるよ。名前はその存在を定義する力でござる。もちろんポチでもタマでもいいでござるが、良い名前を付けるとよいことがあるかもでござる』


 と、そんなようなことを言っていた。


 であればこの変化はクロノの名前に起因するのかもしれない。と考えたのだ。


『クロノという名前はどこから持ってきたでござるか?』


「かみしゃま?」


 つまりギリシャ神話のクロノス神から取った名前だったりする。


『よくわからないでありますが…そういうこともあるのかもしれないであります。強い名前はその存在に影響を与えると聞いたことがあるであります』


 生まれたばかりなのにどこで聞いたんだろう。

 私、気になります。


「ようけんしょう」


『そうでありますな。名前が大事とはいっても詳細は分からないであります。しかしこれから検証する機会はあるであります。

 さて、改めてよろしくであります。吾輩は時空属性の精霊、クロノであります。権能はストレージであります』


 そう、そしてクロノは時空属性の精霊だった。

 これはとても珍しい。


 魔法使いの精霊の基本属性は大体基本四属性と呼ばれる火、風、水、土のどれかが多いのだ。


 これは生活魔法というものに原因がある。


 この世界の人間はみんな魔力を持っている。つまり魔法を使える素養はあるのだ。

 そしてごく出力の弱い『生活魔法』と呼ばれる基本属性の魔法があり、大概の人がこの生活魔法を一つか二つぐらいは覚えるものなのだ。


 そのうちから才能に恵まれたものが魔法に目覚めるわけなのだが、生活魔法もいきなりそんなに色々使えたりはしない。自然と得意な属性が絞られていく傾向がある。そんな環境で魔法使いに目覚めるとおのずと精霊の属性が限定されてしまうわけだ。

 そんなわけで魔法使いの多くが基本属性の魔法使いになる。


 この基本属性によって精霊の持つ【権能】と呼ばれる力が違っていて、魔法の使い勝手に大きく影響を及ぼすことになる。

 なので火属性の精霊を連れた魔法使いは火属性の魔法使いになるのが普通だったりする。


 アルビスの時空属性は特殊四属性と呼ばれるものでかなり珍しい。

 何でこうなったかというと、一言でいうとアルビスの趣味である。


 アルビスは魔法の話を聞いた後、『魔法を使うなら重力魔法だ!』と重力魔法、つまり時空属性魔法を使いまくった。


 そのせいでアルビスの精霊は時空属性精霊として誕生したのだと思われる。


「あう、重力魔法がかっこいいとおもいまちた」


 動機はほんとにそれだけだった。

 反省も後悔もしていない。

 大変満足している。


 そして精霊は【権能】という力を持っているという話は前述したが。

 これはその精霊がいると使えるデフォルトの力だと考えればいい。

 時空属性の精霊の権能は空間収納ストレージだった。


「お、やっちゃ、かちぐみ」


 うん、そうそう、空間収納は定番のチートだよね。


「ためそう」


 すっくとたちあがる。

 そうそう、せっかくの空間収納だ、さっそく…


「ある~、今日はたくさんおしゃべりしてご機嫌ね~」


 部屋のドアを開けて美女が入ってきた。


「かあちゃま」


 アルビス君の母親、ベアトリスだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 というわけで見切り発車です。


 『どういうわけ?』


 いえね、せっかく書いたものをためておいても~見たいなね。

 だったらとりあえず公開しちゃえ見たいな感じで。思いきりよく。

 勢いで。


 というわけで(今度は分かる)よろしくお付き合いください。

 月曜6時、金曜6時にあげていきます。


 タイトルとか紹介文とかは暫定です。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 見切り発車から少し設定を整えて、修正をしました。というかしてます。

 少しは分かりやすくなるかも。


 わたし設定大好きだからなあ…





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