赤石君が園田さんに恋した理由
進藤 進
序章 女の子にハッとする時
シャーペンをカチカチと。
僕が特に何をするではく、ごまかす時の仕草。
隣りに座る、園田さんの横顔を眺めていたくて。
少しばかりのパフォーマンス。
彼女の肌は真っ白。
雪国の少女のようで。
僕は飽きずに眺めていたかったけど。
ここは生徒会室。
各クラスの図書委員が集まった集会。
特に読書好きではなかったけど、思わず立候補してしまった。
山田が、煽るから。
ニヤけた口元を隠すように、アイツは言った。
「困ったなぁ・・・男の方の図書委員、いなかったら俺がなるしかないけど・・・」
ジッと、僕の顔をみつめながら、いたずらな目で促すんだ。
まるで、何もかも知り尽くしているかの如く。
そう、アイツは知っている。
僕が、園田さんにゾッコンだということを。
修学旅行の夜中。
眠れない布団の中で。
アイツと俺は。
互いに好きな女の子の名前を、手のひらに書いていた。
秘密の時間を共有する興奮で。
僕は、忘れなれない体験をしていたんだ。
だから、図書委員に立候補した園田さんのパートナーは。
僕以外にはないだろうと、山田の目が言っていた。
「ハイィッー・・・赤石君っ・・・!」
わざと大げさなジェスチャーで、山田が僕を指さした。
ほんの微かに右手を胸元まで上げただけなのに。
ドッと笑い声がこだまする教室で、僕は顔を赤らめながら園田さんをチラリと見た。
彼女の白い頬の中で、赤い唇が綻んだ気がしたのは、錯覚だろうか。
15歳の秋。
僕は、園田さんと同じ、図書委員になったんだ。
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