第八章 初めてのキス

「・・・ん・・・・」

触れ合った唇の感触は、今でも忘れられない味だった。


ずっと、それはレモンのような甘酸っぱい味だと思っていた。

でも、少し違った。


初めてのキスの味。

ネットリとした、何とも言えない。


なよッとした、感じ。

果物のような爽やかさはない。


でも。

でもでも。


僕には。

僕にとっては。


忘れなれない。

一生で一度の味だったんだ。


「ん・・・ふぅ・・・。」

彼女の息を感じながら、薄目を開けると長いまつ毛のカーブが揺れていた。


まっ白な肌と柔らかな唇。

何年たっても僕には忘れられない、ファーストキスの味だった。


図書委員で、生真面目な不器用な少女は。

今は、僕の妻で。


そのキスは、甘くもないけれど。

今でも・・・。


僕を、とてもとても。

幸せに、包んでくれるのでした。


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