第六章 号泣

「どうして・・・?」

後ろ手に腕を組んで、園田さんはさっきと同じ質問を僕に投げかけた。


僕は聞き返すこともできず、只、質問の意味を考えていた。

そう、十五歳の男の子では答えが見つからないのだ。


ジッと見つめるしかできない僕に向かって、じれったそうに彼女が言った。


「わたし、ブスだし・・・。」

その一言に、僕は気も狂う位の興奮を覚えた。


俯く彼女の白い頬があまりにも眩しくて、僕は無意識に声を出していた。


「そ、そんな・・・・そんなこと・・・。」

余りにも気持ちが入りすぎて、僕の声は途中で掠れてしまった。


(やばいっ・・・泣きそうだ・・・)


ドラマでも男が泣くシーンなんて、嘘くさい。

なのに、なんで、今・・・・?


自分の涙腺のコントロールができないもどかしさに、僕は戸惑っていた。

でも、やっとのことで僕は、自分の気持ちを絞り出すことができた。


「バカヤロウッ・・・」

叫び声と同時に、涙があふれていた。


「うえっ・・・ヒック・・・・うぎぇーん・・・。」

それ以上、何も言えず僕は生まれて初めて人前で泣き出していた。


「あ、赤石君っ・・・?」

予想外の出来事に彼女は戸惑いの表情で、僕に近づいて来た。


「ど、どうして・・・どうして・・・わかってくれない・・・の・・・・?」

真夏の特訓でも泣いたことがない僕が、幼い頃以来の涙を流しながら嗚咽を漏らしていた。


「可愛いのに・・・全然、ブスじゃないのに・・・うぎぇーん・・・」

僕は、只、泣いていた。


公園にいる小学生やお母さん達が遠巻きで見ている中。

僕は、泣き続けていたんだ。


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