第二章 自転車の御姫様

キキッと、自転車が校門の前で止まった。

園田さんの長い足が黒色の制服、プリーツのスカートからニョキっと出ていた。


その白い肌が僕には眩しくて、目をそらしながらも残像を追っていた。

園田さんの乗る自転車はレトロ過ぎて、およそ女子中学生の可憐さには程遠く、オバサンみたいで野暮ったかった。


でも、僕には。

僕だけの魅力が、独り占めできそうで嬉しかったんだ。


田舎の美少女。

園田さんにピッタリのネーミングだ。


彼女を独占できるなら。

全然、OK。


他の男子に、その魅力を気づかせられなければ。

僕は大満足だった。


でも、ヤツ・・・。

山田は、抜け目なく見破っていた。


いつもの体育館の二階。

西島と、山田、そして、僕。


三人で手すりにもたれながら。

ダラダラと。


二年生の迷惑そうな視線を気にしながら。

今日も、三人で引退後のヌルイ部活を楽しんでいた。


今日はさすがに。

吉川さんも、本山さんもいない。


それでも、西島と山田は。

僕と一緒にたむろしていた。


それは、僕のためでもあった。

今度こそ、園田さんに告白しようと。


僕、赤石が決心したからだった。


「絶対、うまくいくって・・・」

一番乗りで彼女を作った西島から、余裕の発言。


コイツにだけは、言われたくなかったなぁ。

あんな魅力的な吉川さんと恋人になったのだから。


一番、オクテだと思っていたのに。

僕も、山田のおバカな作戦にのれば良いのかな?


いやいやいや・・・。

それなら、アイツが真っ先に彼女を作ってる筈さ。


今も、本山さんへのラブコールをブツブツと。

手すりを持つ両手の中で、呟いているだけなのだから。


結局、僕は。

自分なりの形で、彼女に告白することにしたんだ。


結果はどうあれ。

僕の青春のエピソードを。


ハッキリと、残すことにしたんだ。


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