寄付から始まる異世界交流

 世界に突如としてダンジョンが誕生した。挑むべきものを得た人類は当然奮起したが、踏み込む資格を持つのは適性やスキルを有する子供のみだった。そして数十年後、資格なき大人である佐上治臣はサラリーマンとして平凡な日常を過ごしていたが……“異世界平和と摂理支援の会”を名乗る妖精に寄付を迫られ、その日常からわずかに踏み出す。

 まず注目していただきたいのはアプローチです! 異世界からはみ出してきた妖精さんによって、治臣さんが日常からはみ出すチャンスを得る。無資格だった彼にとってその「はみ出し」は心躍らせるものなわけですが、それははみ出すどころかその先にある凄絶な異世界へ踏み込む一歩だったことに気づかされていくのですよ。

 やわらかな入口から徐々に固く澄まされていくストーリーライン、魅せられずにいられません。そして同時に、しっかり形作られた舞台世界とキャラクターの妙に唸らされます。

 ありがちならぬ、ここにしかない異世界を存分に味わわせてくれる一作、あなたもぜひお踏み込みください。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)