これが本物のナーロッパってやつ

著者は、たとえるなら「実際の西ヨーロッパに獣人と吸血鬼とハーレムとご都合主義をぶち込んで中世になるまで煮込んだらこんな世界」、という、なろう系の類型(いわばテンプレ)に逆張りの真っ向勝負を挑んでいる。

中世とはそもそも『暗黒時代』とされた。広大な版図を誇ったローマ帝国が衰退し文明は退化、山賊や魔女狩りがはびこり、貧しく、暴力とキ⚪︎スト教が西欧を支配したとされる時代だ。何故かファンタジーというジャンルの舞台は中世ヨーロッパモデルが多く、さらに実際の中世ヨーロッパとはかけ離れたお気楽ワールドというのも常で、特にネット小説ではそれらが顕著で、ときおりネタ扱いされてもきた。

本小説の舞台、カナン大陸のモデルも(おそらくは)中世ヨーロッパなのだが、著者の中世ヨーロッパに対する解釈が思いっきり暗黒でまず、おもしろい。

そして、上述した「こんな世界」がもの凄い筆致で、かなりニッチな部分まで設定や世界観が作り込まれている。ディティールが追いつかないような箇所はユーモアでしっかりと穴埋めされていた。このユーモアセンスが抜群に狂っているのもまた最高だ。