俺は神殺し!…(偽)~ダンジョンでパパッと稼いで地上ではのんびりスローライフ~

どらいあい

神殺し(偽)となった!

プロローグ

第1話 

「ありがとうございました~」


 その日は12月の24日から25日のイブからクリスマスとなった深夜のコンビニ、1人のアラフォーリーマンが缶コーヒーと1冊のエロ本を買ってコンビニを出て行く背を俺は見送った。


 ……なんて哀れな人だ。この男女カップルがハッスルする聖夜に1人でエロ本買って家に帰るなんて。俺もこんな小汚いコンビニでバイトなんてしていてはいずれあんなどうしょうもない感じのおっさんになってしまうのか?


 嫌だ、嫌すぎる。俺はそんな人生送りたくない!


「……聖夜の爆乳フェスティバル……か」


 俺は現実逃避としてアラフォーが買っていったエロ本のタイトルを思い出していた。俺も帰りに買おうかな……。


  俺の名前は日影歩ひかげあゆむ、名が体を表すと言うかなんというか、この名前の通り特に光に当たる事もなく人生の時間とか労働意欲とか色々と搾取される人生を送ってきた。


 深夜コンビニでアルバイトをしている立派な社会の底辺である、歳は今年で28歳になった。


 本当なら、何か色々と考えなければいけないアラサー目前ではあるが、高卒の俺はそういうのはあまり得意ではないし、なんかもう……色々と諦めていた。


  おっとそういう暗い話はさっさと切り上げて仕事に戻らねばならない、深夜のコンビニは客こそ少ないがやる仕事は結構多いのだ。


 給料の割に大変な仕事である、まあ楽な仕事なんてあるわけないか、特に安月給の仕事とは割を食う仕事が多いのが社会ってヤツだ。


 そんなことを考えながら一人黙々と仕事をしていた。すると見知った顔がコンビニを訪れる。


「おはようございます先輩」


「…おはようさん」


 時間が深夜から早朝に変わる頃、俺の後にバイトに入る後輩の今宮薫いまみやかおるがコンビニに訪れた、年齢は20歳になるかどうか、長く艶のある黒髪と若干のつり目、茶色の瞳をにしてる。見た目は落ち着きがあれば知的な美人になれるのにやたらと無駄口が多い困った後輩である。


 ちなみにその性格はなかなかにイイ性格をしているので見た目に騙されないように気をつけなければならないやつだ。


「お疲れ様ですね、この後は焼き物作りの仕事に行くんですか?」


 これはアルバイトだ、別でも働いてる。焼き物製造業の会社で大量生産とは違い人の手で作るタイプの焼き物作りの会社に勤めている。


「そうだよ、しばらく仮眠をとってな、また向こうも朝の8時前には仕事が始まるしそこまで長くは仮眠も取れないがな」


「先輩は働き者ですね、頭が下がります」


「……ただ単に学がねぇ貧乏人は必死に働くしかないだけだよ」


 そんな世間話をしていると不意に1人の客が訪れる。当たり前だが無駄口なんて叩いていると店長に速攻でチクってくるような客もいるので世間話はそこで終了し仕事に戻る。


 すると後輩がレジの方に行った。奥で着替えようかとレジの奥に向かったのだろう、するとその客が突然大声を張り上げた。


「かっかか金を、金を出せ! 騒いだり歯向かったりしたらぶっ殺すぞ!」


 俺はぎょっとして声のした方を見る、すると四十代くらいのハゲオヤジが包丁片手に今宮に向かって怒鳴っていた。


 普通なら悲鳴の一つでもあげそうな状況だ、だが今宮は特にそんな様子はなかった。

 それどころか目の前のハゲをジト目でにらみ呆れたように口を開く。


「おっさん、あんた酔ってますね、酒は飲んでも飲まれるなって言葉知らないの? さっさと帰ってくれませんか?」


「おっおお前はこの包丁が目が見えないのかクソガキ!? あんまりなめてると本当にぶっさすぞコラァアアッ!」


「いい歳して、バカなことしてるんじゃないよ。見逃してやるからさっさと帰りな」


「黙れ黙れ黙れーー! 年上も敬えないクソガキが、お客様は神様だって言葉を知らねぇのか!? 俺は神様なんだぞ! 神が金を出せつったら黙って金を出せや!」


  横から聞いていても完全に頭がいかれてる発言ばっかだな、あるいは本当に酔っ払っているのか?

 今宮は相変わらず平然とした対応をする。


「私さぁ~そのお客様は~神様で~~すって言葉、広めたヤツ大っ嫌いだわ、それ言い出したやつらの業界以外のところにまでさ、お客様は神様だろっみたいな態度で接してくるバカが! お前みたいなバカがさ! 接客してると夏のハエや蚊みたいにどこにでもいんの本当迷惑! 消えてくれるかなおっさんさぁあっ!」


 今宮に散々煽られたハゲ親父、酔っ払ってただでさえ赤い顔がさらに真っ赤に……。


 ちなみに俺も同じ事を常々思ってる、サービスって海外じゃチップ払うもんなんだよとか、金払ってるからって数千円レベルだろうとか、何十万も出してる訳でもないのに際限なく横柄な態度をし過ぎなヤツはいるのが悪い。


 そして今宮のヤツは俺の方をチラリ、こいつ散々好き放題言っといて後は俺に丸投げするつもりか。


「………このバカ後輩が」


 俺はため息を一つつく、そしてハゲ親父の方に向かって行った。


「すいませんが、そこまでにしてくれませんか?」


「何だお前は!? ちっ近づくんじゃねえぶっ殺すぞ、金を出せコラーー!」


 もう感情のままに支離滅裂だ、まあこれでも本当に今宮に襲いかかってないだけマシなんだけど。こんなやつの対応するためにコンビニでバイトしてんじゃねぇんだぞ俺は。


「……あんた、お金が欲しいんだろ。だったらレジの中には大して金ないから、店の奥の方の金庫の中にまとまった金が入ってる。そっちの方に案内してやるからその後輩に絡むのはやめろ」


 俺の言葉遣いにイラッときたらしく睨まれた。しかし表情こそ剣呑だが、金があるところに案内するという言葉を聞くと 途端にニヤニヤと不細工な顔をさらに碌でもない感じにする自称神。


「なんだわかってるじゃねえか、最初から俺に都合よく動けばいいんだよ。ほらさっさと案内しろ」


「………わかりましたよ」


 そして俺はレジの向こうにある店員の休憩室兼着替え用ののロッカーがある部屋に行った。


 ちなみにの話だがコンビニには防犯カメラがあるがこの休憩室にそういうのはない、更衣室みたい場所がないのでここで女性のコンビニ店員とかも着替えるためである。


 店長もおばさんとは言え女性だ、そこら辺のコンプラはきちんと守るタイプの人だったりする……先輩に1人、今宮をスケベな目で見てるおっさんがいるがな。


 まあそれはいい、つまるところこっちの部屋の方でならカメラに変な映像が残ることはないということである。


 部屋に入り、自称神を中に案内するそしてドアを今宮が閉めるのを見て。俺は動いた。


「おい金はどこにあんだ?」


「そんなのあるわけねぇだろ、金は毎日必要な分以外は店長が持ってコンビニの外に出してるよ」


 俺は自称神をぶん殴った。


「ぶべらぁあっ!?」


「俺さ、元とはいえ探索者なんだよ。お前程度の酔っぱらいなら余裕なんだよ…悪いな」


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