第23話
なんとかスライム共を蹴散らして不人気ダンジョンを脱出した。
「本当に何なんだ、あのバカみたいなスライムの数は。あのダンジョンにあんだけの数のモンスターがいたってのか?」
本当によくモンスターが氾濫してダンジョンからモンスターが溢れてくるなんてことが起こんないもんだ。
ダンジョンを脱出して 一息ついていると、助けた茶髪ツインテールが目を覚ました。
「なっ!? 変態が私に触れるんじゃないわよ、警察に捕まりたいの!?」
「……アンタさ、命の恩人に向かってもうちょっと言う言葉あるんじゃないのか?」
「……命の恩人? そういえば私はスライムに飲まれて…」
記憶が明瞭になるにつれて茶髪ツインテールの表情も変化する、助けられたってという事くらいは思い出してくれたのか?
ならここで一気に話をまとめてしまおう。
恩着せがましい真似をするのは嫌だがいつまでも変態呼ばわりはさすがにウンザリだからな。
「アンタは俺に助けられたんだ、言っとくけどあのまま放置されていたら絶対にスライムたちにのしかかられて圧死してたからな、感謝しろよ感謝」
「偉そうに…そもそもあんなバカみたいなスライムが出て来る事自体がどうなってんのって話よ、変態が呼び出したんじゃないの?」
「ダンジョンのモンスターを無数に使役するスキルなんてのはさすがにまだこの世界でも発見されてないだろ、そもそもそんなスキルがあったらもうダンジョンとかで生活して人間社会なんかとはおさらばしてるわ」
法律だの税金だの何だのと、本当に人間社会ってやつは生き難いったらない。
もっとシンプルに生きたいと何度思ったことが知れないね。
「……それで結局お前は一体何なの? どうしてこんな人がいないダンジョンなんかに」
「人が多いところが苦手なんだよ、だから人がいないところにあるダンジョンに来てたんだ、そしたら見たこともない変なモンスターに襲われて装備全部やられるわ、集めた魔石もやられるわ、そんで途方にくれてたところにアンタとばったり会ったってだけだよ」
「…その話を信用するにしても一旦探索者ギルドの人間たちに話を通した方がいいと思うのだけど?」
確かに探索者同士で問題を解決する事ができれば問題はないが、そうじゃない場合は間に探索者ギルドの人間に入ってもらうというのは基本的なルールだ。
「探索者ギルドに行くっていうのか? あのさ今の俺、全裸なんだけど……」
そう、今の俺は茶髪ツインテールに背中を向けた状態で話している。
この状況でこの女がまた攻撃スキルを使ってきたらさすがの俺もガチギレするであろう状況だ。
「ちょっと待ってなさい……」
そう言うと茶髪ツインテールは手にした杖で地面をコンコン叩いた、すると何もなかった場所に一枚の毛布が現れる。
それを見て俺はピンと来た。
「まさかお前、『異空間収納』のスキルまで持ってるのか?」
「まあねっ容量はそこまで大したもんじゃないけど便利よ」
異空間収納、いわゆるゲームで言うインベントリとかアイテムボックスとかと呼ばれている、超便利系スキルの一つだ。
異空間に任意のものを入れる、そして出したい時に出現させることができるらしい。
生物などは無理らしい、おかげ衣類や毛布などを異空間に収納するとそれに付着していた虫だの雑菌なのが全て始末出来るという。
物が清潔に保てる、そして単純にダンジョン探索の時に手荷物が激減するということだ。
そんなの探索者にとって手に入ったら超嬉しいスキルの代表格である。
そんなスキルをこんな小娘が持っているだと?
許せない羨ましい憎い……俺もそんな優秀なスキルとか欲しい。
というかよこせ。
俺は心の中に久しぶり(大嘘)にどす黒い炎が渦巻いた。
それはもう轟々とに渦巻いたよ。
嫉妬エナジー全開だ!
無論表面上はそんなのおくびにも出さないけどな。
「本当なら自分用の毛布を変態に使わせるとか有り得ないんだけど、命の恩人ってんなら……我慢して使わせてあげるわよ……嫌だけど」
そう言いながら眼鏡を中指でクイッとした、素直なのは良いことだ。
俺も攻撃スキル使ってくる女探索者とかの近くにいたくはないんだぞ。
俺は受け取った毛布を装備して全裸を隠す、裸足なのは仕方ないな。
女探索者がチラチラと見てくる、少し顔が赤い。
そんなに嫌なら渡さなければ良かったじゃんねぇか。
もう使ってんだし返すのは後な。
「そっそう言えば名前……名乗ってなかったわね」
「そりゃそうだ何しろ戦ってたしな、なら名乗るか? 俺は日影歩だ」
「……わっ私は
「だから変態じゃねぇっての!」
そして俺たちは探索者ギルドに向かった。
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