第5話

 このダンジョンの内部は四角く切り出された石に よって作られていた。

 床も地面も天井もどっかの遺跡の内部を思わせる作りだ。


 普通の民家の入り口を開けると、そこから地下へと続く階段があるのだ。

 それを降りて行った先がそんな感じの内装になっている。


 ちなみに明かりなんてないのに昼間と大差ないくらいには明るい、ダンジョンの謎の一つだ。


 当たり前だが建物の外観にあった広さではない、文字通り魔法か何かで本来の空間を何百倍もの広さにしたかのように広大だ、階段の下はそこそこ広いドーム型の空間があり、そこからいくつもの通路の入り口が見えた。


 まあここは不人気ダンジョンなのでどの通路を進んでも、その先にたいした宝とかがあるわけじゃない。


 ゲームとかならトラップというのもあるのだが、リアルダンジョンの場合だとそういったものはない。

  なぜなら仮にトラップがあったとしても一度発動してしまえば二度と再度設置されることはないからだ。そんな知性を持ったモンスターは不人気ダンジョンになんか出ない。


「まあ、あっても壁の穴から矢が飛んでくるとかじゃなくて、精々石コロが飛んでくる程度がこのレベルのダンジョンだけど…」


 そんなわけで一度攻略された不人気ダンジョンには危険も少ない代わりに旨味もないのである。

 俺は適当に選んだ通路を進むことにした。


 通路は一本道だ、横幅と天井ともに八メートルくらいはあり俺が多少暴れても問題ないくらいの広さがある。

 これくらいの広さがないとモンスターとやり合うことを考えると狭いしな。


 モンスター相手だから武器とかも普通は振り回す わけだしな、そんなことを考えながらとことこ歩いて行くとついにモンスターとエンカウントした。


 現れたモンスターは青いプルプルのあいつ。

 スライムである。ここが不人気ダンジョンである理由の一つは現れるモンスターが最弱モンスターのスライムだけだからだ。


 そしてスライムはいくら倒してもそのドロップアイテムは大した価値もない小さな魔石しかないという所で探索者からも相手にされないモンスターなのだ。


 そして世の中にはそんなダンジョンは腐るほどあるのでそう言うハズレは何度か探索された後はほぼ完全放置みたいになるのは珍しくない。


 おかげで俺みたいに気まぐれでそうだっダンジョンに行こうなんてことを考えるヤツがいても気軽にダンジョンに行けるので割と助かっています、ありがとう。


「さてっそろそろんな感じで戦闘開始であるってか?」


  スライムもモンスターはモンスターなので人間を見つけると積極的に近寄ってきて攻撃を仕掛けてくる。


 奴らの攻撃は全体重を乗せた体当たりのみだ。

 あのゲームみたいに呪文を覚えて火の玉を飛ばすとかレベルさえ上げれば最強の呪文を覚えるなんてことはさすがにない。


 そんなことあってたまるかよって話したけどな、そんなんされたら探索者たちの死体の山ができてしまうぞ…。


 ポヨンポヨンという効果音が聞こえてきそうな鈍間な動きをしながらスライムが俺の方に寄ってくる、そしてググッと構えてからボヨ~ンと俺の方に体当たりをしてきた。


 俺はそれを腕をクロスガードさせて受ける。

 スライムの全力の体当たりを俺が受けたわけだが次の瞬間、消滅したのはスライムであった。


「マジか、これが高ランクのステータスの力かよ…」


 底ランクステータスのモンスターが高ランクステータスの探索者に攻撃をした場合。そこにかなりのステータス差があると稀に攻撃したはずの側が全く反撃もされていないのに自滅する事があると聞いた事がある。


 まさかそんなトンでもな事が本当に起こるなんて驚きを通り越してあ然としてしまった。

 消滅したスライムは光となって消える、後にはビーズみたいなちっこい赤色の魔石だけが残った。


 ちなみにこの魔石、スライムのものでも一つで数百円で取引される。値段はそのモンスターの強さに応じて少しずつ大きさや重さが変わるからグラムやキロで計算されるので詳しい値段は査定を受けないと分からん。


 しかしそれ以上に重要な事がある。


「つまり俺はダンジョンを散歩するだけでお金を稼げてしまうって事か?」


 なっなんて事だ、俺は殆ど何もしないでお金を稼げるシステムが出来てしまったんですけど!?

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