第一章 不人気ダンジョンと後輩
第4話
ダンジョン、日本においてその数は未確認も含めれば軽く二十万以上はあるのではと言われる正体不明の謎の異空間である。
その数の多さに日本以外の各国もまともな対応が未だに取られていない、しかしそこで得られる資源やらなんやらは間違いなく今の人類社会を支えているのだ。
時代はまさにダンジョン大飽和時代、命やら採算を度外視してもダンジョンに入るおバカな人間、探索者を世界各国のエラい人は量産しょうと時には法律すらこねくり回してあれこれしてるカオスな時代。それが今の社会なのだ。
ダンジョンというのは突然入り口が現れたり、何の変質もなかった建物の内部が突然ダンジョンになったりと、とにかく様々な種類のダンジョンが現代社会には出現している。
その内部も洞窟といった感じやどこかの遺跡を思わせるような風景や大自然のど真ん中などそのロケーションは様々だ。
普通のビルという見た目のダンジョンの中に入ったら中は鬱蒼としたジャングルでしたなんてのザラにある。
ちなみにだがジャングルみたいな鬱蒼とした場所でもモンスターは出るが変な病気を持った虫とかだったり毒性のある植物とかが自生していたりするという報告は探索者をしていた時には一度も聞いたことはない。
そういった部分についての作り込みが甘いゲームみたいだな、なんて話が一時期は探索者たちがやり取りをする掲示板で流行ったもんだ。
まあ探索者のステータスの中にある状態異常耐性、これのステータスランクが上がると病気とかにもならなくなるので毒とか持っても生存競争に勝てないからダンジョンの内部にはその手の存在がいないとも言われているんだけどな。
そんな感じでダンジョンってやつはいつの間にやらポンポン増えるようなものなので国が全て管理をしているというわけではない。
ダンジョンからは多くの資源を得られるという利点はあるが、別に放っておいたところでモンスターが増えすぎて地上に溢れてくるなんて言うお約束な設定も特にないので念のため国が雇った探索者がアルバイトとして一定の周期でダンジョンをパパッと見て回るくらいの管理しかしていないのだ。
人間の慣れというやつは恐ろしいもんだな、と傍から見ていると感じるところだ。
そんな感じなのでほとんど人が出入りしないダンジョンなんかは看板が置かれるのだ「ここはダンジョンです」と記されてるヤツがな。
入り口に誰もいないこともザラである。
俺が今向かってるのはそんなダンジョンの一つだ、 街中にある古い民家の一つなのだが突然ダンジョンになって住んでいた家族が引っ越したという過去があるダンジョンである。
見た目は二階建ての古い一般の家で入り口のところに「ここはダンジョンです」という看板がマジで出ていた。
他には誰もいない。
ダンジョンというのも当たり外れがあり不人気のダンジョンなんてのは大抵こんな感じだ。
「さてさて、というわけで久々にダンジョンに戻ってきたわけだが……どんなもんか」
一人でブツブツと言いながらダンジョンに入る、ちなみに以前引退を決めた時に探索者の装備なんてのは全部処分して金に変えたので何も持っていないんだよな俺。
手にするのはレジ袋に入ったエロ本だけである、これさえあれば生きて帰るぞって気力は湧いてくるけどな。
つまりは勇気百倍となる魔法のアイテムだ。
問題はない。
ダンジョンの世界においてステータスというのがほぼ全てだ、圧倒的なステータスを持っていれば素手であろうと全裸だろうと人間よりもはるかに大きなモンスターですらぶっ倒すことができる。
というかぶっ倒している動画を見たことがある、その動画の配信者たちよりも全てのステータスが高いであろう今の俺ならば何とでもなるだろうと考えた。
ちなみにダンジョンを探索する人間でこんなあまちゃんな考えを持ってるようなやつが大成しないというのが探索者たちの常識である。
まあ全くその通りで全く成功しなかったのが俺なんだけどな。
しかし、何の因果がコンビニでアルバイトしてたら新たな称号を手に入れてしまった。
ならば試してみるしかないだろう。
「俺は全ての常識を覆し、成り上がってみせる!」
何となく意味のない決意表明をしておく、意味もなければ大した理由もない。
そもそも別に成り上がるつもりもない。
金さえ手にできれば十分だ。
しかし久しぶりのダンジョン、ステータスの最強具合には期待してるが普通に怖い。
俺は内心緊張しながら久しぶりのダンジョンへと足を踏み入れた。
「あっエロ本は入り口に置いておくか」
コイツを爰に置いておけば必ず帰ってこようと思えるのだ、勇気百倍!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます