第2話

 探索者、それはこの現代日本において突如出現するようになったダンジョンと呼ばれる人外の化け物どもがもりもりわく場所を探索し数多の資源を地上に持ち帰る者たちのことを言う。


 要はダンジョンという漫画やゲームに出てくるようなファンタジーな危険地帯があり更に本当にそこにいるモンスターたちを倒すと人間超えてんじゃね? みたいな力を得ることができるようになる場所である。


 そこで強化された……まあレベルアップとかじゃないのだが、とにかくその人間たちは一般人じゃ歯が立たなくなるくらい強くなる、ちなみにの話だが俺は探索者の中でも才能というものが大してなく引退した側の人間だ。


 だからこそ早々に見切りをつけてコンビニでバイトしたり田舎の焼き物会社で働いたりしてるわけだが、そんな俺でも包丁片手にした酔っ払いくらいだったらどうとでもできるのだ。


 時間にしてカップラーメンが完成するよりも若干短めの時間、それくらいの時間があれば酔っ払いをタコ殴りにして酔いを覚まさせることくらいはできる。


 素面に戻った酔っ払いは正座をして俺に謝罪をさせている真っ最中だ。


「本当に申し訳ございませんでした!」


「分かったなら別に良い、あんたに何があったかは知らないけど酔っ払って包丁振り回すようなことは、もうするなよこっちも警察とかには言わないから、そのまま家に帰れ」


「はい、本当にありがとうございました、本当に申し訳ございません」


  二度謝られた上に土下座しそうな勢いで頭を下げられた。このストレス社会、このおっさんの身に何があったのか、あくまでも想像の話だがなんとなく俺にもわかる。


 俺も人から色々と搾取されたり小バカにされるだとかなら、社会に出て十年かそこらの経験ですらそういったのが幾つもあるからな。


─お前らは機械だ! 人形だ! 黙って俺の言うことを聞けば良いんだよ!─


 ……ちっ嫌なヤツの言葉を思い出しちまったな。


 本当に、なんの理由もないのに人って人を下に見出すとずっと舐めた態度や言動をしてくるんだよ。後はまるで空気みたいに無視するのも普通に傷付くんだよな。


 この人の場合は俺の比じゃないのだろう、無論警察とかにそもそもいいイメージがないというのもある、これから帰ってさっさと寝たいので警察なんか呼びたくもなかったのもこのおっさんをさっさと返す事にした理由の一つだ。


 おっさんはさっさとコンビニを出て行った。他の客が本当になくてよかったな。

 するといつの間にか傍に来ていた今宮が俺に言ってくる。


「先輩って変なとこで人に甘いですよね~」


「別に甘くはない、警察が来てごちゃごちゃされたら俺の仮眠する時間が減る」


「そういうところは自己中ですよね先輩」


「自己中じゃない人間ってこの世にいるのか? 俺はいないと思うぞ」


「確かにそうですね、人間って自分以外の為に何かするのって苦手な人が多そうです……あっけど先輩は半分くらい別かもですね。助けてくれて嬉しかったですよ。わりと本当に」


 半分ってなんだよ、微妙な感謝の言葉を言われても困るんだが?


 そんなやり取りを少しした後、さっさと俺はコンビニから出ようとした。

 すると頭の中に声がした。何年かぶりに聞いた声だ。


【おめでとうございます、自称神を撃退しました。その功績により称号『神殺し(偽)』を獲得しました 】


「………何だって?」


 不思議とその頭の中に響いたその内容は忘れない、女性の声だ。ダンジョンが現れるようになってからこの声を聞こえる人間が社会には現れたのだ、今はそれはどうでもいい。


 俺は急いで財布の中に仕舞っている探索者のライセンスカードを確認する。

 これは要はステータスカードだ、探索者たちのステータスやセットしてある称号を確認することができる。


 俺はライセンスカードを操作して先ほど頭の中に流れた称号をが本当にあるのかを確認した。

 すると本当にあった。


「…う~わマジかよ」


 ライセンスカードには確かに『神殺し(偽)』という称号が記されていた。

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