第25話

 その後、探索者ギルドの奥にある部屋で面白くも何ともない話をしばらくした、というか同じ話を何度もさせるんじゃないよ。


 何度突っ込まれたって知らないもんは知らないんだっつうのそんな愚痴がこぼれてしまうくらい何の身にもならない話に時間を費やしてしまった。


 ちなみに花鳥は俺に貸した毛布を回収した後は話が平行線であることを理解した時点でさよならすると言って帰った。


 それと花鳥曰く「私は貸しを作ったままっては気に入らない主義なの」とメアドと電話番号を一方的に教えられた。

 何か貸しをチャラに出来る話がある時に連絡しなさいとの事だ。


 ちなみに俺はスマホも失っていた、そしてメアドも電話番号も覚えてなんていないので今度会ったら教えると言った。

 まあまた会う事があるのか分からんけどな。


 探索者は各地を転々とする事も少なくない、俺もいずれは日本各地を旅行しながらのんびり暮らす為にダンジョンでちょちょっと金を稼ぎながらの生活とかもしてみたいもんだ。


 それとありがとうと言う言葉は小さな声でだけど言われた。

 個人的にはそっちの方がメアドや電話番号より嬉しい気分になったな。


 ……多分あの毛布は捨てられるだろう。

 あるいはクリーニングにも出されるのだろうか。


 優秀な探索者なら金はあるだろうしわざわざ全裸野郎が着た毛布など使い回す理由が見当たらないのでやはり廃棄処分されるんだろう。


 まあ仕方がない、変態に人権はないのだ。

 無論変態を脱っした俺には何の関係もない話である。


 俺は説明をしただけで過去に似たようなモンスターの事例がないか確認してみたがやはり炎の翼を生やして天使の輪っかみたいなもんを持ったスライムなんてのは他のダンジョンでも全く確認をされていないらしい。


 つまりここに来ても何の情報も得られませんでしたって話だ、唯一の収穫と言っていいのかどうか微妙だがあのギルドの女性職員の名前が天海絵理あまみえりという名前であるということがわかったくらいである。


「それでは日影歩様、今日はダンジョンの情報提供をありがとうございました。それといろいろと時間を拘束してしまって申し訳ありません」


 何故かほぼ無関係の天海に頭を下げられた。


「いやっまあ別にいいですよ、警察にも突き出されませんでしたから……」


 ちなみに俺を捕まえていたガタイのイイギルド職員とかはとっくの昔に別の仕事のに向かったのでここにはいない。


 本当なら連中には頭を下げて欲しいくらいである。

  まっお役所仕事なんだから自分に一切責任がないって感じなんだろうけどさ。

 羨ましいオツムの構造をしてるよ公務員って人種はさ……はっ!


 しかしそういう意味じゃこの絵理って人は自分から貧乏くじを引きに来てるな。

 わりと損をする性格なのかもしれない。


 なんて言うか最初はジト目されちゃったしあまり印象とか良くなかったけど、今回の一件で他のギルド職員よりかは好印象を持てる人だと思った。

 案外これが今日一番の収穫だったりしてな。


 俺にも『神殺し(偽)』なんて話したくない情報もある。

 これ以上は追求する事もされることも勘弁なので話を切り上げてさっさと帰路につく。


 ちなみに用意された服やズボンはもらっていいと言われたのでもらうことにした。

 まっ普通の黒の長袖とズボンなので値段も大したことはないのだろうけど貰える物はしっかり貰うのが俺だ。


「それじゃあ俺はもう帰ります、失礼します」


「はいっ今日はありがとうございました。またのギルドご利用の際はお願いします」


「貴女がいるのならそれも悪くないですね」


「……ふふっそうですか」


 と言うかこの天海さんがいなかったらここのギルドに二度と顔なんか出したくないと思ってしまう俺は狭量なのだろうか。


 まあいいやっ今日一日の結果としては収支は完全に赤字だ。

 しかし新しくゲットしたスキルやら称号やらで考えると黒字かもといった結果である。


 ここはプラスに考えるのが一番だな、そして俺は家に帰った。

 もちろん徒歩で。


 するとその家の前に誰かいた。

 と言うか今宮だな。


「おい今宮、お前どうして俺の家に来てんだ?」


「あっ先輩! 何でも何もないですよ! スマホでいくら連絡しても全く返事がないメールも帰ってこないし、ほんの少しでも心配したんで来たんですよ?」


「……ほんの少しかよ」


 そういえば俺スマホなくしてたわ。

 買い換えなきゃな、あ~めんどくさ。

 そしてせっかく来たんだしということで今宮を家にあげてやることにした。


 単なるアルバイトの後輩なのだが、こいつは妙に馴れ馴れしく俺の家にも何度か遊びに来たことがある。


 友達がいないのかよっぽど暇なのかと以前聞いたら「先輩はアホですか」が呆れられた。

 納得はできないことで小馬鹿にされたことを俺は未だに覚えているぞ今宮。


「心配したっていうのは分かったが、結局何の理由もなく家に来たのか?」


「まさかこれを見てくださいよこれを!」


 そういうと今宮が俺に見せてきたのは新品のライセンスカードだった。


「……おいっ今宮まさかお前」


「はいっ私もバイトを辞めてダンジョン探索者になりました! 先輩、以前言いましたよね。探索者になったらダンジョン探索を手伝ってくれるって!」


 物凄い笑顔だな。

 おいおいマジかよコイツ、本当に探索者になったってのか? 俺は見せられたライセンスカードの内容をまじまじと見てみる。


「…………ん?」


【名前:今宮薫いまみやかおる

【性別:女性】

【称号:寄生型探索者見習い】


【筋力:F】

【知力:E】

【魔力:D】

【俊敏:F】

【精神力:D】

【器用度:E】

【幸運:D】

【状態異常耐性:F】

【精神異常耐性:F】


 後輩がいきなり変な称号持っとるーーっ!?

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