第7話

 まあそんな事を言っても、別に格好いいスキルとか発動してキングスライムを瞬殺! とはいかないのが現実な訳だが…。 


 探索者にはスキルと呼ばれる要はゲームの魔法みたいなことができる力がある。

 ライセンスカードなどで保有しているスキルの効果は確認することはできるのだ。


  まっ俺は攻撃スキルなんてのは全く持っていないけどな、スキルを覚える方法はその称号を獲得した時やあるいはダンジョンで手に入るアイテムなのでスキルをゲット出来るのである。


 レベルアップでスキルもゲット!

 とかいって簡単に手に入るものではないのだ。

 『神殺し(偽)』の称号を得た俺だが、それらしいスキルを得ることはなかった。


 まあそれについてはないものはしょうがないだろう、世の中そんなウマイ話ばかりじゃないよな。むしろこのステータスなら普通に体当たりとかだけでキングスライムを圧倒できるかも知れんし。


「結局はぶっつけ本番にはなるが……やってみるか」


 さっきのショボい練習の成果を試してやる。

 俺はキングスライムと対峙した、道の真ん中を歩くように堂々とキングスライムへと接近する。


 俺の存在に気付いたキングスライムはそのでかくて青いプルプルの体をかすかに震わせる、するとヤツの周囲に幾つもの青い水の玉のようなものが浮かんだ。


 そしてそれらまるで意思でも持つより俺の方に向かって飛来してきた。

 あの水玉の一つ一つがただの水ではなく強力な酸だったはずだ。


 一つでも当たれば人間の体なんて一瞬で溶かされてしまうってネットの掲示板に書いてあった。

 まあそれなら一つも当たらなければいいだけなのだが、そんなことは普通の人間ができる芸当ではないだろう。


 だが今の俺ならそれが可能かもしれないのだ。

 俺はキングスライムの攻撃に対して意識を集中した。


「!?」


 その瞬間キングスライムも奴が操る酸の玉がその動きの全てがやたらと緩慢になったスロー映像がなにかを見てるような感覚に近い。その中で普通に動くことができるのは俺だけだ。


 これが高ランクステータスの力か。ちょっと凄すぎて引くわ。


 俺は普通にいやっ想像以上にテキパキと早く身体が動く。酸の玉が俺にむかって沢山来るわけわけだが、そいつが俺に近づいてくるスピードがあまりにも遅い。


 こちらの通路をふさぐ前に俺はさっさとその横や後ろを通り過ぎていった。

 そして気がつくとキングスライムの攻撃を全て躱せてしまい、さらにはキングスライムの目の前に俺は立っていた。


「これが神殺しの称号によるステータス補正の力か。完全に人間やめてるな」


 言ってはなんだが、こんなもん酔っ払いを倒すだけで手に入れて良かったんだろうか。

 ……まあいいや、とりあえずできる事として目の前のキングスライムを倒す。考えるのは家に帰ってからだ。


 しかしキングスライムって殴ったら蹴ったりしたら倒せるのだろうか?

 目の前のこの青いプルプルを素手で殴ったりしたところで倒せる想像が全くつかん。


 しかし今の俺にできるのはパンチやキックだけ、俺の存在に気づいたキングスライムはその巨体で俺を押し潰そうとのしかかってきた。


 こいつの体も飲み込んだもの一瞬で溶かす酸だと聞いたことがある、だとすると結構やばくねぇかな俺。


「近づくんじゃねえよ……オラァアッ!」


 そう言って俺は右手で思いっきり殴った。

 その次の瞬間キングスライムの巨体が一瞬にして消し飛んだのだ。


 俺は思わず「は?」とすっ飛んきょうな声を出してしまった。当たり前だよ適当にパンチしただけでお前、危険度Bランクのモンスターが消し飛んだんだぞ。


 キングスライムの体は光になって消えていく。

 ある意味ダンジョンの中でもやたらと幻想的な光景が広がるが……。


 なかなか広範囲に弾け飛んだんだな、だってそこら中から光が立ちのぼってるもん。とかそんな感想 しか頭に浮かばなかった。


 ていうか『神殺し(偽)』の称号、偽物ですらやばすぎだろ、検証も何もあったもんじゃないな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る