そして、誇り高き『彼女たち』の旅は続いてゆく。

怪奇譚を蒐集する主人公。そして彼女に付き従う吸血鬼。
知的で自由で純粋なる好奇心を持つ『彼女』には、その分「何か」が欠けている。それを補うのが、もう一人の『彼女』だ。
 二人の間には表面上、利害や馴れ合い、何となくの惰性が。けれども深く魂のレベルで結ばれた愛情、信頼そして互いへの尊敬があるのだろう。真に大切な者に対するやりとりは時折、感情と共に垣間見える。
これを(冒険譚というだけではなく)恋愛譚とするのならば、相当に上質だ。
 怪奇譚蒐集の過程は、ミステリアスな謎解きを以って悲劇を昇華させる。その舞台に於ける登場人物の機微までもが、醜悪であって尚、美しく胸に迫る。

『彼女たち』は互いが居さえすれば、何処にでも行けるのだろう。

この世の果てまでも。

その他のおすすめレビュー

小野塚 さんの他のおすすめレビュー567